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予言なんてクソクラエ
第九章 逃亡
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はお前一人なんだな。」
「そうです。いや、うーん、こっちに戻ってすぐに重雄と二人で檻に入りましたが、最初に手紙を発見したのは重雄です。しかし、重雄が手紙を手に持って読んでいたのは数秒です。すぐに奪い取りましたから。少なくとも後半のあの部分は読んでいないと思います。」
「さて、それはどうかな。もしかしたら読んでいるかもしれん。それとなく重雄を見張れ。とにかく、問題はその後半の部分だ。」
「全く頭が混乱するばかりです。」
「今、人を動員して満を探している。もし、満を発見したらどうしたらいい?」
「そのことが問題です。もし拘束したりすれば、だんまりを決め込むでしょう。」
「つまり、満が手紙に書いた筋書きを反故にするということか?だが、それでは満も座して死を待つばかりだ。」
「私は彼を良く知っています。彼の狂気は死の恐怖にもまさります。彼は絶望の淵をさ迷っています。まして我々は……」
と言って片桐は口をつぐんだ。
「はっきり言っていい。我々は満をここに置き去りにした。満は心の底では私を許していないと言いたいのだろう。分かっている。」
「はい、彼を拘束するのは愚の骨頂です。彼の思い通りやらせましょう。ですから、見つけたら、見張ります。そして守るのです。」
「どういう意味だ?」
「つまり、警察から守るという意味です。警察に逮捕されれば、彼は来るべき日にここに戻って来られなくなります。だから警察から守るのです。」
「そうだな、それしかないかもしれない。よし、それでいい。こうなったら、なんとしてでも、満を警察の手から守りぬけ。いいな、片桐。」
片桐が部屋を去ると、杉田は深いため息を吐き、両手で顔を覆った。何もかもちぐはぐだった。富良野に落ち着き、これで満と縁が切れると思ってほっとしていた。満といると心がかき乱され、一時として心安らぐことはなかったのだ。
あれは、満が中学生になったばかりの頃のことだ。 猫を惨殺する光景を目撃したのだ。思い出すだけで身の毛がよだつ。血だらけの猫は恐怖と怒りに毛を逆立て、必死に抵抗するが、鎖に繋がれているため身動きできず、その体は満のナイフで切り刻まれていった。
満をこのビルに置き去りにしたことに何の後悔もなかった。来るべき時を、息を殺してじっと待っていた。そんな時、樋口から緊急の連絡が入ったのだ。満が逃げ出したという。だから片桐を帰した。
 しかし、片桐はここで満の残した手紙を発見した。その手紙に書かれていたことは、まさに衝撃的だった。それは、天変地異の起こる時期と安全な場所の情報がまったく出鱈目だったということだ。いや時期については幅をもたせてあるだけだが、富良野は、少しも安全な場所ではなかったのだ。何ということだ。「くそっ」と呻き、机を思い切り叩いた。コーヒーカップが音をたてた。
富良野のビルに湯水のよう
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