第八章 最後の審判
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合的無意識にアクセスするには無我の境地に到らなければなりません。エドガー・ケイシーは妻の導きでその境地に達しました。この無我の境地に至るには、瞑想、座禅もこれを可能にするのかもしれません。しかし、凡人がこの境地に達するには、お題目を必死に唱えるのが一番の早道なのです。それも集団で行うのが理想的です。」
「集団で?何故、集団で唱えるのが理想的なのです?」
「共鳴です。声が重なり共鳴します。実は集合的無意識は人々の想念波動の集合体なのです。従って、集団で読経すれば声が重なり共鳴しますが、これが、この集合的無意識の波動に幾ばくか近付くことになります。」
「エドガー・ケイシーはその集合的無意識から情報知識を得た。では妻はその集合的無意識から何を得て癌を消滅させてしまったのですか。」
石井は、言うか言うまいか迷った。しかし、誰にも口にしたことのない自ら構築した理論を披瀝したい衝動にかられた。しばしの沈黙の後、おもむろに口を開いた。
「実は、エドガー・ケイシーはこうも言っています。『顕在意識(自我意識)は外界からの印象を受けて、その想念の全てを潜在意識に移すが、これは顕在意識が滅びても残存するのである。』とね。」
「ど、どういうことです?」
「つまり、人は生きている間にその全ての想念を潜在意識に移しますが、その人が死んでもそれは存在し続ける。つまり、死んだ人の想念波動は集合的無意識に残されているということです。これはあくまでも僕の私見なのですが、所謂、霊界とは、この残された想念波動の集合体で、それが集合的無意識の中に存在すると考えています。」
「……」
「この霊界には、大竹さんの奥様が前世で功徳を施した人々がいたとします。奥さんの悲痛な叫びが霊界にいるその人々に届き、彼らの慈しみの波長と奥様の癌を治したいという波長がさらに共鳴し、奇跡が起こったとは考えられませんか?」
と言って、石井は「しまった」と思った。いきなり「霊界」などという胡散臭い言葉を吐いてしまった。まず、「輪廻転生」について十分に説明すべきだったのだ。論理の展開が性急過ぎた。案の定、大竹の顔に困惑の表情が浮かんでいる。笑いで誤魔化すことにした。
「はっはっはっは、ちょっと奇抜過ぎますよね、これって、はっはっはっはっは。まあ、そんな考え方もあるっていうことで。いや、はや。そろそろお暇しなくては。清美さんは良く寝ていらっしゃる。僕が宜しく言っていたと伝えて下さい。」
冷や汗を拭いながらソファーから立ち上がる石井に、困惑顔のまま大竹が問いかけた。
「連絡先を教えて下さい。このまま帰したら清美に叱られてしまいます。お名刺があればそれを頂けませんか。」
石井は名刺入れを取り出し、大竹に一枚を渡した。大竹がそれをじっと見詰めて、
「すいません、長瀬とありますが。」
と名刺を差し出す。慌て
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