第八章 最後の審判
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きた。「清美」とひとこと叫んで駆けてくる。
男は門扉を開けると、清美を抱き寄せた。
「しばらくだったな、清美。元気にしていたか。えー、どうしたんだ、その顔は、格好は。まるで不良じゃないか、眉なんか剃っちゃって、で、母さんはどうした?一緒じゃないのか?」
「ママは置いてきた。私はパパと一緒にいる。」
感動の対面に置いてきぼり食ったような気分でいる石井に、男はふと視線を止めた。
「このひとは?」
「この人は、石井さん。私立探偵なの。詳しくは家の中で話す。石井さん中に入って。」
石井はどうするか迷っていた。このままマンションに帰りたい気もしたのだ。
「さあ、どうぞ。」
男の強い口調で石井の迷いが吹っ切れた。
居間で、コーヒーを啜りながら、石井はこれまでの経緯を話した。そのたびに清美が合いの手を入れ、さくらにくすねられたり、二人の少女に払わされた金額に言及する。清美は石井に気を遣って、父親にそれなりの謝礼を払わせるつもりなのだ。
父親の大竹良蔵は、年の頃、50代初めで、見るからに気の強そうな雰囲気を漂わせているが、どことなくやつれている。話を聞きながらしばしば清美に愛しそうな視線を走らせるが、その視線は時として虚空をさ迷い、不安そうな色を帯びる。
しばらくして、清美は良蔵の膝で寝息を立て始めた。石井は良蔵の不安が、あのことに違いないと思った。帰りのトラックの中で、清美は悟道会の予言をぽつりぽつりと語った。石井はその話を聞いて思わず絶句した。それは三枝節子がもたらした予言とそっくりだったからだ。
三枝の彼氏の予言は、恐らく悟道会の受け売りだろう。結局、三枝から地球的規模の災害が、何時、どんなふうに起こるか聞き出せなかったが、期せずして、清美からその概要を聞くことになった
清美の話によると、その地球的規模の大災害は、日時ははっきりしないが二月以内に確実に起こり、富良野は日本で最も安全な地域だというのである。
「もしかしたら、お嬢さんを、あちらに置いておきたかったんじゃありませんか?」
「えっ?」
「予言の話は、清美さんから聞きました。」
一瞬、押し黙ったが、ふーと吐息を漏らし答えた。
「馬鹿な親だとお思いなんでしょうね?」
「いえ、そんなことはありません。私も三つほど、その教祖の予言が当たったのを確認しています。例のイラン大地震には度肝を抜かれました。」
「そうですか。私は、この二年ほど彼の能力を目の辺りにしてきました。ですから教祖のいう日本沈没の予言も現実になるのではないかと思っています。」
「では、何故、東京に残ることにしたんです。」
ふっと笑顔をみせ、静かに口を開いた。
「教祖は、あの富良野のビルを聖書に書かれたノアの箱舟に位置づけています。大災害後、僅かに生き残った人間たちが、新たな大地で日本人の祖となる
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