第八章 最後の審判
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中へと没していった。周りのコンクリートの堤防もあちこちで寸断され、家々を、そして倒壊した家から逃げ出した人々を押し流した。
この1分ほどの巨大地震で東京の街は壊滅した。あちこちで火の手が上がり、紅蓮の炎が天を焦がし、渦をなしている。生き残った人々は火を避け逃げ惑う。傷を負い血だらけの体、それでも生きようと必死で駆ける。しかし、彼らは突然立ち止まった。
巨大な壁が迫っていた。それは海の壁だ。正に悪夢としか言いようがない。100メートルを超えると思われる津波が太平洋側から押し寄せていた。ある者は立ち尽くし、ある者はへなへなと崩れ落ちた。逃げようとする者はいない。無駄だと分かっていたからだ。
津波は東京の街を飲み込んだ。全てを破壊しながら怒涛となって突き進む。人々は潰され、或いは流され、一瞬にして命は奪われた。さらにこの地獄の使者は川と言う川から容赦なく内陸深くに向かって遡っていったのだ。
少年はこの地獄絵図を上空から見ていた。目を輝かせ、どこか恍惚とした表情をし、ずたずたに寸断される日本列島を眺めていた。小一時間ほどして津波が静かに引いてゆく。瓦礫を引きずりながら海へと戻ってゆく。しかし、その流れは途中で堰き止められた。
新たな津波が来たのか?いや違う。海がゆっくりと日本列島を覆っているのだ。平野を埋め尽くし、緩やかな山並みは掻き消え、そして静寂が訪れる。かつての連峰の頂が島となって残された。日本列島の殆どが沈没したのである。
「これは夢なんかじゃない。現実に起きることなんだ。あと一月半後、必ず起こる。」
少年は夢の中で確信をこめてそう呟いた。
(二)
「なに、DNA鑑定で一致したって。そいつは本当か、間違いないんだな。」
受話器に向かってがなりたてる田村警部に捜査本部の刑事達の視線が集中し、互いに目と目を合わせ頷きあった。ここ綾瀬警察署に置かれた捜査本部にひさびさの活気が漲ろうとしていた。
女性の死体が発見されたのは、五反田のビルの工事現場だ。コンクリート打ちの直前、現場監督が掘り返された跡を認め、何かが埋められたと直感した。こうして死体発見に到るのだが、綾瀬警察署の捜査本部もまさか、この死体が自分達に関係してくるなど思いもしなかった。
捜査本部は1年2ヶ月前に設置された。連続して三人の少女が暴行され殺されたのだ。その体に残された体液から同一犯と断定された。そして4人目の犠牲者が長いブランクを経て突然現れた。犯人は犯行を控えていたのか、或いは死体が発見されていなかっただけなのか?
捜査員達は警部の指示に従いそれぞれに散った。綾瀬警察署の女性刑事、五十嵐昌美は警視庁捜査一課のベテラン、小林刑事とともに現場検証を行った品川警察署に赴くことになった。五十嵐はB5版のノートパソコンをカバンに押し込み、小林の後を追っ
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