第七章 逃走
[4/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
が10万だ、この野郎』と心の内で毒づいたが、顔には出さずそれで手を打つことにした。
「よし交渉成立だ。おっと、銀行にいかないと一銭もない。ちょっと付き合ってくれ。」
歩き出すと、二人はのそのそと付いてくる。知り合いなのか、花壇に座った少女達が声を掛けてきた。
「どこにしけこむの。」
二人の少女はそれには答えず、ふんと鼻を鳴らしただけだ。
銀行で20万円下ろして、梓に10万円渡した。
「俺はこれから一仕事ある。君たちは用意ができたらホテルマロウド508号室に行ってくれ。ホテルのフロントには電話しておく。1時間で準備してくれ。少女にも君達が行くことを電話しておく。少女の名前は清美だ。そうそう、忘れていた。清美が腹をすかしている。食い物も頼む。」
そう言い置いて、石井はタクシー乗り場に急いだ。
「どちらまで?」
「この辺で、長距離トラックの溜まり場は?」
「朝日食堂ってのが、ここから2キロ先にありますが、そこまで行きますか?」
「ああたのむ。」
車が走り出す。ホテルに電話を入れた。
「もしもし、長瀬です。これから1時間ほどしたら少女二人が、僕の部屋に行きます。鍵を渡してください。えっ・・・。何を馬鹿なこと考えちゃって、そうじゃないって。僕の部屋の荷物をちょっと片付けてもらうんです。」
相手はなかなか信じてくれない。
「本当ですって、僕はこれこら一時間後に戻ります。フロントで清算したら、そのまま部屋には行かずに出発します。ええ、部屋には行きません。とにかく部屋にダンボールがあるはずですから、それを後で発送しておいてください。」
(三)
小一時間ほどしてホテルに電話を入れた。
「清美さんか?」
「ええ。」
「変身した?」
「まるで自分じゃないみたい。」
「よし、それでいい。いいか、これからが勝負だ。俺はこれから1分後にフロントで清算をすませる。フロントには奴らの見張りがいる。俺はこいつを外に引っ張り出す。君たちは今から10分後にその部屋を出るんだ。そしてタクシーを拾え。」
「何処へ行けばいいの。」
「朝日食堂だ。タクシーの運ちゃんにそう言えば分かるはずだ。俺は後から行く。」
電話を切ると、ホテルに向かった。自動扉が開き、ちらりとラウンジに視線を向けた。男はコーヒー一杯でまだ粘っている。
「可愛い子達でしたよ。」
親しく口をきくようになったフロントがにやにやしながら軽口を飛ばす。
「そんなんじゃないって。」
などと言いながら清算をすませ、出口に向かう。あくまでも男を無視していた。自動扉が開いた瞬間、後ろに首を回し、男に向かって笑いかけた。男ががばっと立ち上がる。石井は走った。男は追ってくる。
振り返ると、案の定、男は走りながら携帯に何かがなりたてている。仲間に連絡しているのだ。おっつけ、駅前の三人
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ