第七章 逃走
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の部屋はベッドメイキングも済み、ドアは開け放たれていた。幸い彼女達は廊下の外れの部屋に入っている。清美を呼んで囁いた。
「俺は君の着る物を調達してくる。申し訳ないが、その間、向いの部屋のクローゼットにでも隠れていてくれ。この部屋のベッドメイキングが終わったら戻って内側から鍵を掛けるんだ。わかった?」
「うん、分かった。ねえ、私、お腹すいちゃった。お願い、何か食べるもの買ってきて。」
「ああ、たっぷり買いこんでくるよ。」
石井はカメラやがさばる寝袋を梱包して荷札を貼り付ける。そしてリュックを背負い、何食わぬ顔で部屋を出ると、エレベーターに向かった。
(二)
ロビーに下りると案の定、いかにも宗教オタクっぽい若い男がラウンジでコーヒーを飲みながら目を光らせている。素知らぬふりで外へ出た。背中に視線を感じるが、追ってはこないようだ。ふと肩の力が抜ける。いずれにせよ面は割れてはいないのだ。
駅前に行き、辺りを見回した。やはり怪しげな男達が三人ほどいて、目配りしながらうろついている。その男達をすり抜けて、若者達がたむろする広場の一角にむかい、目星をつけた二人連れの少女に近付き声を掛けた。
「ちょっと良いアルバイトがあるんだけど、やってみる?」
「良いアルバイトって?」
二人は意味ありげに笑いながら目配せした。
「ちょっとの時間で一人一万だ。」
太目の少女が顔を歪めながら答えた。
「冗談じゃねえよ。二人いっぺんに相手にしたかったら、金、出し渋るんじゃねえよ。しみったれたこと言いやがって。」
もう一人は金髪を掻き揚げそっぽを向いた。この金髪の少女の体型はまさに清美のそれとぴったりと一致する。濃いアイシャドウに彩られた瞳には精一杯背伸びした幼さが見え隠れする。
「実はそっちの方じゃない。別のことを頼みたい。一人の少女がある宗教団体から追われている。その子をこっそり逃したい。少女はジャージのまま逃げた。だから着る物が必要だ。少女の身長、体重、スタイルは君と同じだ。君の名は。」
金髪がにっこりと微笑み答えた。
「梓よ。宗教団体って、森の近くにできた悟道会ね。」
「ああ。」
「あいつら、人を馬鹿にしたような目で見やがる。」
「宗教やっている奴は皆そうさ。心の中で自分が特別だと思っている。猫撫で声で寄ってくるのは、勧誘する時だけだ。」
「ふふ、本当にそう。で、私の体に合う服を調達すればいいのね。そして、もしかしたらその子を変身させる、でしょ?」
「梓、君は頭がいい。その通りだ。君たちの服装のセンス、髪の色、化粧も同じにしてほしい。そうそう靴も必要だ。」
太目が話を引き取る。
「いいわ、面白そう。たまには人助けもいいわね。それなら服装費とアルバイト料含めて10万円ってとこね。ねえ、頂戴。」
『安物を着ていやがるくせに、何
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