第六章 誘拐
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いわ。」
「そいつは結構。面白そうな話だ。聞かせてもらおうか。」
「私、誘拐されたのよ。」
清美は既に知っているらしく、頷きながらじっと石井の目を見た
「誘拐とは穏やかじゃないな。何時、何処で、誰に。」
「面白い、まるで英語の授業みたい。いいわ、順番に答えてあげる。最初は何時ね。そうあれは9月初めの頃、石神井公園で、最後が問題ね。実は悟道会の奴らによ。」
「いかん、最も重要なことを聞き忘れた。何故?」
「うーん、どうしようかな。そこが微妙なのよ。」
「おい、助けてくれた恩人にそれはないだろう。」
「分かった、話すわ。それは私が悟道会の秘密を握っているからなの。その秘密っていうのは、悟道会が或る少年を軟禁していること。逃げようとしても屈強な男達に見張られているから逃げようがない。」
「何故、何処に軟禁されている?」
「これ以上は言えないわ。」
さくらはきっぱりと拒絶した。石井も黙らざるを得ない。しかし引っかかることがあった。
「しかし、あの時、僕が警察に行こうと言ったけど、君はそれを止めた。もし、警察に行けばその少年の救出を訴えることが出来たはずだ。何故止めたんだ。」
さくらは下をむいてだんまりを決め込んでいる。清美が口を挟んだ。
「兎に角、複雑な事情がからみあっているの。私もさくらさんから事情を聞いたけど何とも言いようがないわ。事実は小説より奇なりって言うし。たまたま私はその少年の同級生で・・・」
清美が急に口をつぐんだのは、さくらが肘でつっついたからだ。石井の瞼が重く伸し掛かる。まあ、話は明日、ゆっくり聞き出せばよいと思った。
「よし、今日のところはもう寝よう。君らはそのベッドに寝なさい。」
そう言うと、石井はごそごそと寝袋にもぐり込んだ。視線を感じて振り返ると、清美とさくらがにやにやしながら石井を見ている。清美が言った。
「おじさん芋虫みたい。」
「はいはい、芋虫おじさんはもう寝ます。おやすみなさい。」
キャッキャという笑い声を聞きながら、石井は心の中で毒づいた。「冗談じゃねえよ。ホテルに泊まって、何で寝袋に寝なければならないんだ。それは俺のベッドだぞ。」などと思う間もなく石井は深い眠りに陥った。
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