第六章 誘拐
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ジネスホテルまで歩いた。そんな異様な三人を怪しむ人影さえない。それでも追っ手の男達に用心しながら、漸くホテルにたどり着き、非常口から中に入った。
そのビジネスホテルは零時には鍵を閉める。石井はカメラマンと称し、深夜の樹海、そこに蠢く動物達の生態を撮りに行くと説明し、非常口の鍵を借りておいたのだ。部屋に入ると二人の女はベッドに倒れ込んだ。石井が、
「寒いだろう。二人とも風呂に入れ。」
と言うと、少女とジーンズの女は顔を見合わせ、先を譲るような仕草でぐずぐずしている。石井は笑いながら言った。
「おじさんは気が短いんだ。一人一人じゃなくて一緒に入っちゃえよ。浴槽は十分に広い。それに、覗いたりしないから安心しな。兎に角、冷え切った体を温めないと。話はその後で聞こうか。」
風呂にお湯を張ると、二人にガウンを放り投げた。少女はにっこりとしてベッドから立ち上がった。ジーンズの女もその後に続く。
暫くして、少女がガウンの紐をきっちりと結んではにかむ様子で風呂から出てきた。もう一人は胸元を覗かせ、熟れた肉体を誇るような表情で石井をちらりと見た。よほど安心したのか、もうおどおどした様子はない。石井はソファーで煙草の煙をくゆらせていた。
「どうだ、少しは落ち着いたか。もう大丈夫だ。鬼どもに、僕達が何処に隠れたかなんて分かりっこない。かくれんぼの極意はそこを動かないことだ。」
にっこりと笑った少女の顔に笑窪が浮かぶ。可愛らしい笑顔だ。
「まず、君達の名前と歳を教えてくれる?」
少女が先に答える。
「大竹清美、17歳。」
「あたし、坂口さくら、年齢は不詳よ。」
「年齢不詳か、まあいいだろう。大体想像できる。」
「幾つに見える?」
「うーん、23〜4だな。」
「残念でした。こう見えても二十歳前よ。そう言うおじさんはどうなの。」
「歳は30歳、名前は長瀬、おっとこれは偽名だ。本名は石井真治、探偵だ。」
さくらがすぐに反応した。
「マジッ、探偵?カメラマンっていうのは嘘?本当。何を調べていたの。」
「ある人を探している。教祖の愛人だ。名前は保科香子。知ってる?」
「さあ、清美は?」
「もしかして、あの美人秘書じゃないかしら。」
「スタイル抜群で、顎に黒子がある?」
「そうそう、黒子、あるある。本部ビルでは何度かみたことあるけど、でも、あそこでは見かけなかった。」
ふーむと考え込んだが、すぐに頭を切り替えた。
「それより君達は何故あのビルから逃げ出した?奴等は血相変えて追いかけて来たが。」
さくらはしばらく俯いていたが、顔を上げてぽつりと言った。
「私、監禁されていたの。それを清美が助けてくれた。私には、やらなければならないことがあるから、逃げてきた。あの人たちは私を黙らせたいのよ。」
「殺してもか。」
「そこまでする気はな
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