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予言なんてクソクラエ
第六章 誘拐
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りに出た。
 右手に白っぽい後姿が見え、必死で走っている様子だ。近付いてゆくと白く見えたのはジャージだと分かった。もう一人は闇に溶け込むような黒い服装をしている。ライトを点灯すれば追っ手と間違える。無灯火で近付いて声をかけた。
「おい、おい、随分と酔狂な人達もいたもんだ。こんな夜更けにジョッキングかい。」
刺激しないように冗談めかして言った。それでも相当に驚いた様子で、
「おじさん、悟道会の人。」
と聞いた声が震えている。ライトを点灯すると、一人の少女の顔が浮かび上がった。見ると、まだ幼さの残る少女だ。15・6歳だろうか。もう一人は20代前半で、黒のジーンズとジャケットを着込んでいる。なかなかの美形だ。
「悟道会、何だそれは。俺はカメラマンの長瀬だ。深夜の樹海を撮影した帰りだ。」
ジーンズの女が振り向いて、顔を恐怖で引きつらせた。バックミラーで見ると、大型のバンが通りに顔を出したところだ。石井は後ろのドアを開け怒鳴った。
「早く乗れ。」
二人は飛び乗った。見ると少女の方は部屋履きだ。アクセルを全開にして街に向かった。軽自動車を借りたことを後悔していた。スピードの差は如何ともしがたい。直ぐに追いつかれた。バンは前に回り込もうとする。そうはさせじと行く手を阻む。
 そんなことを繰り返しているうちに、バンが暴挙に出た。ドンと車ごと突っ込んできたのだ。弾かれて危うく電柱にぶつかりそうになるのを漸く堪えた。今度はぶつけられないように必死でハンドルをさばく。
 ジーンズの女は何度も悲鳴をあげ、後部座席で「捕まりたくない、逃げて、逃げて」と叫ぶ。少女が手を背中に回しそれを宥めている。街並みがまばらながら見えてきた。石井は一気にスピードを上げた。バンが迫ってくる。ハンドルを切ってオカマを避ける。後輪が流れ慌ててブレーキを踏んだ。
 車がスピンし、バンが前に出た。これ幸いと来た道を引き返す。さっきは気付かなかったが、細い道が左側にある。急ハンドルで左折して、猛スピードで50メートルほど進むと、バックミラーにバンのヘッドライトが映し出された。
 畑の中の農道だ。暫く走り、十字路を左折して街中に向かう。エンジンが唸りを上げる。次第に民家が見えてきて、そして住宅地にはいった。バンが猛然とスピードを上げてくる。石井も負けじとアクセルをふかす。
「よし、あった。」
石井は思わず声を上げた。軽自動車がやっと入れるような路地である。両側に民家が密集している。車を急停車させ、ゆっくりと路地に回した。大型のバンでは進入不可能だ。そろりそろりと車を進めていたが、バンが止まって、中から人が何人も降りてくるのをみて、「ままよ」とばかり、アクセル全開で走り出した。

    (三)
 車を大通り手前の路地に乗り捨て、リュックをジーンズの女に預けると、少女を背負ってビ
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