第六章 誘拐
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でくれないかな。」
「ご安心下さい、身内の不幸とか何とか言って、一週間もらっておいたわよ。有難いと思いなさい。それより何なの。」
「僕のノートパソコンとそれからカメラ一式送ってほしいんだ。ノートを送ってもらえれば飯森さんのレポートは直ぐにでも送れる。」
「真治さん、あなた、三日間の約束でしょう。明後日には顔を見せるんじゃないの。」
「いや、それが、どうも・・・」
「分かったわよ、それじゃあ、住所を言って。」
「そうこなくっちゃ、明日の10時着便でお願いします。今すぐ航空便の受付所に持って行けば間に合うと思う。ええと、住所は北海道・・・ちょっと待って、ホテルのマッチがあったはずだ・・・」
「何ですって、北海道、まったく、もうっ…。」
(二)
監視を始めて二日目の夜を迎えた。深夜二時をまわったところだ。おんぼろの軽自動車を借りて、夜中に樹海のとばくちに置き去りにされている三台の廃車の間に紛れ込ませ、そこに身を潜めた。
最初は塀からの進入を考えていたが、角度をもった1メートル幅の忍び返しと、無線式の警報感知装置を見て、すぐに諦めた。買い込んだアルミニウム製の脚立は樹海の中に捨てるしかなかった。残るは搬入口からの進入である。
東側搬入口は思いのほか車の出入りが多い。シャッターが開いた僅かの隙に入り込たもうと考えていたが、昼夜を問わず二人のガードマンが厳重に監視している。なす術もなく終いには寝袋に包まって寒さをしのいでいた。
石井は次第に無駄なことをやっているという思いが募り、嫌気がさしていた。忍び込めないのであれば、ここで見張っていても意味はない。教祖の愛人であれば搬入口からではなく、正面の門から出入りするだろう。
まして、彼女がここにいるという証拠を掴んだとしても、彼女と連絡がとれるかどうか疑わしく、たとえ連絡がとれたとしても、末期癌の母親がこのビル内の病院に入院していると言われれば、はいそうですかと引き下がらざるを得ない。
諦めようと、寝袋から這い出し車のエンジンをかけようとしたその時、通りから車が入って来たらしく、ライトが塀を照らし出した。そしてシャッターがガラガラと音をたてて上がり始めた。
トラックが消え、再びシャッターが降りてくるのを見守っていた。シャッターが地面の50センチまで降りてきた時、突然、白と黒の二つの塊が転がり出て来た。どうやら人間らしく、立ち上がると泳ぐように通りに向かって走り出した。ついで、シャッターの内側からドンドンと叩く音とともに、「早く開けろ」という怒鳴り声が聞こえた。
石井はエンジンを駆け、バックで急発進して砂利道に出た。シャッターが開き始め、その下から男達の脚が照らし出される。「おい、車の音がするぞ。」という声とともに、一人が地面にかがみこんだ。石井はアクセルをふかし通
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