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ヴァレンタインから一週間
第24話 悲鳴
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た瞬間、意識が遠のき掛ける。そう。鼻から、口から、そして、表皮からさえも浸み込む毒の霧が、俺の身体中を侵し、生命力を奪い、そして、未来さえも奪おうとする。
 但し、相手も俺の雷撃を受けた以上、無傷と言う訳では無いはず。

 何処か遠くから悲鳴のような物が聞こえて来たような気がするが、これは無視。
 間延びした世界の中で、そう思い込み、振り返った様に右手に現れた七星の宝刀を一閃。
 俺の霊気を受けた七星の宝刀により蒼白き光輝の軌跡が宙に引かれた刹那、降り(しき)る氷雨に異世界の生命体の体液が混じる。

 その異臭。その黒き雫を一滴受けただけで身体に刺すような痛みを発し、意識を別世界に……根の国へと連れ去ろうとされる。
 その一瞬後、まるで大地自体が鳴動させるかのような咆哮が頭の上から浴びせ掛けられ、魂さえも吹き飛ばしかねないその咆哮に、一瞬でも気を抜くと、膝から崩れ落ちそうに成った。

 その振り返った先に存在して居たのは、
 
 がしゃがしゃ。がしゃがしゃ。

 巨大な身体の節ごとに一対ずつ生えた暗い赤の肢が、その名前の示す数以上連なっているように感じた。

 がしゃがしゃ。がしゃがしゃ。

 暗黒の霧に霞む向こう側に、紅き怒りに燃える瞳が……。
 刹那、爛々と光を発する目玉が近付いて来る!

 そう。俺の雷撃と、それに続く一閃で致命的な傷を負った以上、最早、ヤツも俺を得なければ、生き延びる術はない。
 龍の天敵とはムカデ。そして、奴らは龍を喰らえば、喰らった分だけ巨大に、そして強力に成る。

 右足を軽く引き、左半身を前に。
 抜き打ちの構えを取る俺。
 そう。今の俺に残されている能力(ちから)では、この場を逃げ切る事はおろか、この位置から数歩動くだけが精一杯。

 ムカデの毒や体液と言うのは……。

 闇を切り裂き、俺に向かって走る紅き光。
 本来、ムカデは龍よりも速い。しかし、現在の俺は、アガレスの職能により強化された存在!

 黒き体液を撒き散らし、ムカデの顎門(あぎと)が近付き――――――

 熱い衝撃が身体を貫いた。

 そう。通常の刃物ぐらいならば、傷付ける事すら出来ない俺の精霊の護りを、いともあっさりと貫いた牙が、俺の身体に生命に危機をもたらすレベルの傷を付けたのだ。

 またもや、聞こえない。いや、発せられるはずのない少女の悲鳴が耳に届いた。

 しかし!
 痛みなど感じて居る暇はない。更に、これが最後にして、最大の好機。
 毒液は間違いなく俺の生命を削り、能力を衰えさせて居る。しかし、自らの時間を操り、僅かに牙の狙いを逸らさせる事に因り、一撃で死亡する致命的な位置を護り切った俺の勝利だ。

 絶対に外す事のない位置。ヤツの牙の間から一閃。そし
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