第24話 悲鳴
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りの答えに小さく首肯いた玄辰水星。
そして次の瞬間。彼女は俺の待っていた台詞を口にしてくれたのでした。
それは、
「そして、忍くんには、これから先に何回か、こちらの世界に来て貰う事が決まりました」
☆★☆★☆
闇の蒼穹より降り来たるは銀の氷雨。
アスファルトを濡らす雨の日独特の香りが周囲を包み込み、
厚き雲に閉ざされた昏い世界を冷たく濡らして行く。
「有希、寒くないか?」
パラパラとひとつの傘を叩く雨音が二人の耳に届く距離。俺の右肩の前に存在している少女に、そう問い掛ける俺。
その俺の口元を、真冬の雨に冷やされた大気が、白くけぶらせた。
そんな俺の問い掛けに対して、俺の右肩の高さで、彼女の首が左右に振られた。これは当然、否定。
そして、
「問題ない」
彼女に相応しい言葉に因る答えが返される。その彼女の元からも、白い吐息が発生して、直ぐに消えた。
但し、その素っ気ない言葉に反して、現在の彼女からは楽しげな明るい陽の気が発せられて居るように感じられる。
更に言うと、この状態は、俺がこの世界に度々帰って来る事が判ってから、ずっと続いて居るのですが……。
これは、彼女自身も、この奇妙な同居人の事を、少なくとも邪魔だとは思っていないと言う事なのでしょう。
もっとも……。
俺は、そう考えながら、自らの探知の精度を上げ、更に彼女を強く感じようとする。
そう。俺に詳しい回数は知らされてはいないのですが、それでもこの世界……。彼女の元に帰って来る必要が有ります。
彼女の未来を創り上げる為に……。
過去の歴史の改竄が行われなくても、涼宮ハルヒと言う名前の少女の監視任務を帯びた人工生命体。……長門有希と言う名前の少女が存在して居ても良い状況を創り上げる為に、俺は絶対に帰って来る必要が有りますから。
それが、今の俺の願い。
彼女に、消えて欲しくない、と言う願いを叶える方法ですから。
結界材を打ち込む場所。高いフェンスに囲まれたその場所は、夜の闇と、音もなく降り注ぐ冬の雨に濡れた、廃墟のような感覚を抱かせる場所で有った。
そう。日の有る内は其処に通う生徒たちの活気に満ちた生命力に溢れる陽の世界に。
しかし、それを失った陰の気に沈むこの狭間の時間帯は、昼間とは正反対の異なった顔を見せる事になる。
そう。それは正に異界。そう呼ぶに相応しい空間。
深夜。五メートルは有ろうかと言うフェンスを有視界に転移する仙術を駆使してすり抜け、かまぼこ型の屋根を持つ体育館の裏側へと潜入に成功する俺と有希。
其処。外部からの視界の妨げと為すかのように植えられた銀杏の木々が、し
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