第24話 悲鳴
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俺が、有希の心が意外にも。いや、見た目通り繊細で傷付き易い物だと推測を纏めた瞬間、俺の左隣に存在していた女性から、少し抑揚を欠いた口調で話し掛けられた。
その声に籠められた雰囲気は微妙。呆れている部分が大きいように感じますが、それ以外にも何か籠められて居るような気がします。
ただ、具体的にどんな物かと問われると、どうにも表現し辛い物なのですが……。
その声のした方向に視線を移す俺。其処……。応接セットから一歩踏み出した地点に立ち、其処から俺と有希を少し呆れたような視線で見つめる女性と視線が交わる。
そう。有希と会話を交わして居る間に立ち上がって、その全員の顔が見渡せる位置に、何時の間にか玄辰水星が移動していたのだ。
もっとも、呆れられる意味なら良く判りますか。
俺は、立ったままで微苦笑と表現すべき表情を浮かべる女性から、成長途上の曖昧さのない、作り物めいた有希の容貌と、繋がれたままと成って居る右手へと視線を移した。
そして、その俺の頬に浮かぶのも、玄辰水星が浮かべる表情とおそらく同じ種類の物。
流石にこの状況では呆れられて当然でしょう。状況はちょいと違うのですが、傍から見ていると、人前で平気でイチャついて居るバカップルその物。
もっとも、この繋がれた手に関しては、自分から差し出した手ですから離すタイミングを逸して仕舞った、と言うのが状況としては正しいのですが。
そんな、俺の苦笑にも似た表情をじっと見つめる有希。
吸い込まれるような深い湖にも似た瞳で俺を見つめ、それまで彼女の方からは柔らかく乗せられているだけで有った手が少し強く握られた。
何時の間にか温かさ、普段通りの柔らかさが戻った繊細で、華奢な彼女の手を感じた。
そして……。
そして、俺の感情を読み取ったのか、有希の方から解放してくれる俺の右手。
何となく、離れ難い。そんな微妙な余韻を残しながら……。
その事を確認した玄辰水星の表情が、少し変わった。
それまでは、かなり柔らかい微笑みを浮かべていた彼女が、真面目な……。判決を告げる裁判長の如き表情、と言えば伝わり易いですか。
その真面目な表情を浮かべ、
「貴方……。忍くんが帰った後の長門さんに付いては、私の管理下に置かれる事と成ります」
……と、そう告げて来た。
管理下ね。少し皮肉の籠った思考が先に立つ俺。もっとも、これは想定内。ここに有希の身体のチェックを行う為に彼女が現れた以上、これから先の有希のメンテナンスに関しても彼女が面倒を見る事と成るのは当然。
そして、その流れから、玄辰水星の管理下に有希が置かれるのは当たり前でしょう。
「はい、判りました」
俺は短く答える。
その俺の想定通
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