第24話 悲鳴
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改めて問い直してみる俺。但し、既に改めて答えを聞く必要はないとも思いますが。
それに、彼女の瞳も、そして、雰囲気も先ほどまでとは違って居ますから。
彼女は小さく首肯いた。そして、
「わたしは、わたしの意志で涼宮ハルヒの監視任務を続行する」
先ほどと同じ内容の言葉を淡々と続けた。
「そうか。有希がそうしたいなら、俺はそれで構わない」
俺も当然、先ほどと同じ答えを返す。
しかし、先ほどとは違う。彼女の瞳が違う。彼女から発せられる雰囲気が違う。
そして何より、繋がれたままの右手が違う。
「理由は……」
必要最小限の言葉で問い掛けて来る有希。但し、繋がれたままの手を彼女の方から放す心算はないらしい。
確かに、強く繋がれている訳では無い。
しかし、彼女の瞳とその指先が、離される事を拒否している。
「理由の説明なら、必要はないで」
俺は、実際の言葉にしては、そう答えて置く。
しかし、【念話】の方で続けて、
【涼宮ハルヒの監視任務。それが、俺と有希の出会いの理由。
それならば、それを続ける事が俺との絆の確認となる。そう考えたんやろう?】
……と問い掛ける。
微かに。今度は本当に微かに首肯く有希。しかし、先ほど小さく首肯いた時よりも、彼女の手は、温かい方向へと動いていた。
【最初から、その程度の事ならば、実際の言葉にせずとも判っているから、心配する必要はないで】
それに、先ほどの小さく首肯いた時と、微かに首肯いた時の違いの理由についても、判っている心算でも有りますから。
そうして、
「言葉にするのならば、もっと大切な言葉を、もっと大切な相手に対して伝えてやれば良い。重要なのは、それだけ」
最後の部分だけ、本当の言葉で伝える。
もっとも、彼女に取って、俺が大切な相手なのかは、それとも違うのか、については定かでは有りませんが。
先ほどの反応は、迷子に成った子供と同じような雰囲気でしたから。
おそらく、俺と彼女の間に有る信頼度と言う物はそんなに高い物ではないと思います。
いや、完全に信頼し切るには、未だ積み重ねて来た時間も、経験も足りなさ過ぎると言う事。
其処に、少し突き放したような言葉を俺が使って仕舞った。
彼女……。有希は未だ人との接触の経験が浅い為に、俺の言葉の表面上を流れる雰囲気だけを感じ取って、妙に不安にさせて仕舞った。これが、先ほど有希が微妙な気を発した経緯の真相と言う事でしょう。
つまり、彼女、長門有希と言う少女は、態度や口調などから推測出来るよりはずっと繊細な、傷付き易い心を持って居る、と言う事なのでしょうね。
「えっと、それで、御話は終わったかしら?」
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