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ヴァレンタインから一週間
第24話 悲鳴
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えは、思い通りに動かない彼女の事を突き放した、と取られる可能性の有る一言。
 要は、言葉と配慮が少し足りなかっただけなのですが……。

「やれやれ。ホンマにコミュニケーション能力が不足しているみたいやな」

 そう、有希に話し掛けながら、入って来て以来、ずっと立ちっぱなしに成って居た、扉の傍から歩き始め、彼女の正面。玄辰水星の隣に腰を下ろす俺。
 そして、応接用テーブル越しに彼女へと右手を差し出した。

 その俺の右手を、戸惑いの視線で少し見つめた後、しかし、ゆっくりと。いや、おずおずと差し出した自らの右手を重ねるようにして、繋いでくれる有希。
 その繋がれた彼女の繊手は、彼女の名前に籠められた呪いの如き冷たさ、そして、何故か、普段とは違う、何か堅い感触を俺に伝えて来ていた。

 まるで、現在の彼女自身の心を示すかのように……。

【俺は、俺が死亡した後の魂をやる、……と約束した。そんな相手に、今更、何か隠さなければならない事はない】

 見事に意味不明。更に性急な【念話】。しかし、そんな事はお構いなし。俺は更にその【(接触型の念話)】を続ける。

【魂を渡す、と言う事は、その魂を手に入れた後はどう扱っても良いと言う事。
 そのまま直ぐに手放して、転生の輪に還そうが、
 ぼろぼろになって消滅するまで使役しようが――――】

 俺は、其処まで告げた後、柔らかく重ねるだけで有った右手を少し強く握る。
 彼女の手が、俺の心を受け取り易いように。

【それとも、その魂を胸に抱いたまま、懐かしい、醒めない夢を見続けようが……】

 その【言葉】を聞いた彼女の心が揺れた。
 表情は変わらず。但し、その一瞬だけ視線が揺れ、そして、心が……。

【ちゃんと有希が考えて、自分で決めた事ならば俺は反対しない。
 俺の方に、反対する明確な理由が無ければな】

 そう、強く彼女に【心の声】で伝える俺。
 但し、それは無暗矢鱈と肯定するだけではない。俺が、俺の判断で彼女の判断が間違っていると思うのならば、彼女が自ら決めた事で有ったとしても反対をする。

 それが、友達と言う物だから。

【まして、俺の命令に従わなかったからと言って、有希の存在を消して仕舞ったり、罰を与えたりするようなマネはしない】

 先ほど、有希が発して居たのは寂寥感。俺が、不用意な発言をした為に、彼女の事を突き放したように感じて仕舞った可能性が有ると思った。
 故に、少し回り道のような話に成ったけど、この一連の流れの【会話】を行ったと言う事。これならば伝わったと思いますから。

 一瞬の空白。繋がれたままの右手はそのままに。
 そして、

「それならば、もう一度聞く。俺が元の世界に行った後に、有希はどうしたい?」


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