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予言なんてクソクラエ
第四章 再会
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なった理由かもしれないけど…」
石井は言葉を遮り、
「そうかい、分かった。もう何も言うまい。君の好きにしろ。」
と言うと席を立った。後ろも振り返らず喫茶店を後にした。地球規模の災害は本当にやって来るのか。彼女の目はそれを確信していた。空を見上げると星云が漆黒の闇に煌めいている。その星に語りかけた。
「母さん、本当に破滅がやってくるの?人間の傲慢さを懲らしめるため自然が復讐するってことなの?」
星はまたたくだけで何の啓示も与えてはくれない。
 何故、母と同じ能力が遺伝しなかったのか、我ながら恨めしく思ったものだ。しかし、だからこそ、石井は母の能力の解明に駆り立てられた。石井はこれまで、その究明のためどれだけの本を読んだだろう。夢中で様々な分野の本を漁るように読んだ。

 そしてある時、「集合的無意識」という言葉に出会った。この言葉によって初めて母の能力、つまり予知能力と霊能力が説明できたのだ。この「集合的無意識」とは、個人を超えた、人類の長い経験と知識が蓄積され形成された無意識領域のことで、個人に遺伝的に継承されると考えられている。
 しかし、石井は、母とのコミュニケーションを通じて、個々の心は深奥で繋がっていると確信していた。従って、この集合的無意識は、個々がそれぞれ固有に持つのではなく、実はそれぞれの無意識は絡み合う糸のように繋がっていて、人類という種としての集合的無意識を形成していると解釈した。そしてこの石井の個々の心は深奥で繋がっているという解釈は或る事実によって証明されていたのである。
 最初にこの事実を報告したのは、ニホンザルの研究者達である。在る島で、一匹の子ザルが餌のイモを海水で洗うと砂が落ち、しかも塩が効いて美味いことを発見する。この知識は大人達にも伝わり、島の最後のサルが、これを試した翌朝、海を隔てた隣の島で子ザルが海水でイモを洗い始めたという。
 世界の動物学者を驚かせたこの事実は様々な実験により追認された。一つの例だが、マウスを使った実験がある。
 まずアメリカのマウスのグループに一つの迷路を学習させ、全てが学習し終えたら、今度はイギリスの同数のマウス達に同じ迷路の学習を始めさせる。すると、イギリスのマウスは、アメリカマウスの半分の時間で学習を終えてしまう。
 別の迷路を今度は逆にイギリスから始めると、アメリカにおいて、またしても半分の時間で学習を終える。学習時間が半分になるということは、つまり、その知識が何らかの形で伝わったことを示しているのである。
 これら二つの例は、距離を隔てた種同士が、獲得した知識を伝え合ったことを示すのだが、スマトラ沖大地震では、野生動物はいち早く危険を察知し難を逃れたが、彼らは、彼らの祖先が取得した知識、「地鳴りに続く地震、そして津波」という時を越えた知識を咄嗟に思い出し行動を起
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