第四章 再会
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ないのだ。しかし石井とて心かき乱された。まして付き合い出して間もない恋人を横取りされたのだ。聞く権利はある。
「で、どうだったんだ、例の予言の話は。僕も聞きたい。」
ちらっと視線をあげたが、口元が歪んだ。嘘を言おうとする人間の表情だ。無理に笑顔を作って口を開いた。
「嘘っぱち。あの人の作り話。」
ふふふっと悪戯っぽい表情で笑うと続けた。
「あの人、私にどうしても振り向いて欲しくってあんな嘘を書いたって告白したわ。確かに彼は予言能力を持っているの。だからこそ今日の地位を勝ち得たんですって。それが分かって欲しくてあんなメッセージを私によこしたのよ。馬鹿みたい。」
「他の三っつの予言は本当だったが、地球規模の大災害だけが嘘だと言うんだな。」
またしても悪戯っ子のような含み笑いを浮かべ、目をくりくりさせた。その仕草は三十女には似合わない。
「そ・う・ゆ・う・こ・と。あれは私の関心を惹くための大嘘だったんですって。本当にあの人ったら、最初に会った時のおどおどした態度が嘘みたいで、茶目っ気ばっかりで可愛いいの。急に恋心が芽生えちゃって。本当にごめんなさい。」
石井は三枝が虚勢を張っているのが分かった。彼女は誰にも打明けられない真実を知った。しかしそれを隠そうとしている。恐らく三枝は、ストーカー野郎に口止めされているのだ。
間違いなく三枝は、元ストーカー、安東喜一郎から世界的規模の大災害の真実と日時を聞いた。その恐怖が彼女の顔に貼りついている。安東はその災害から逃れる術を彼女に教えた。その見返りは、彼女の心と体だ。姑息な安東の顔が浮かぶ。
取り繕おうとする三枝の不自然な表情は石井をしらけさせたが、彼女の努力を無にするのも大人気ない。にやりと笑って答えた。
「良かった。三度目のイラン大地震の予言にはびっくりしたよ。世界的規模の大災害が近日中にも起こるかもしれないと、本気で思い込んでしまった。僕もこれからは枕を高くして眠れるってわけだ。」
三枝は、ふと心の重荷が下りたように肩の力を抜いた。石井は立ち上がりかけ、別れを告げようと思ったが、意地悪な気持ちが蠢いて再び腰を落とすと声を殺して言った。
「君は嘘を言っている。」
「嘘なんて言ってないわ、全部本当のことよ。」
「君の彼氏は予言能力を持っているかもしれないが、実を言うと僕は嘘を見抜く能力を持っている。君はまだ僕を愛している。彼なんて本当は嫌いだと顔に書いてある。」
「好きよ、愛しているわ。」
思いのほか大きな声に自分自身びっくりしたようだ。周りの人々の視線が彼女に集まった。三枝は声を低めて再び同じ台詞を吐いた。
「愛しているわ。信じてもらえないと思うけど、急に好きになったの。こんな不思議な体験は始めてだし、その能力を持っている彼を見直したというか、すごいなっていう思いが、好きに
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