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予言なんてクソクラエ
第二章 予言
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医で、歳は石井より一つ年上だ。美人で魅力的な女性だが、石井にとって、彼女のあまりにあっけらかんとした性格とその積極性にペースが乱されということもあり、苦手のタイプだった。

 レストランに入って三枝の名前を言うと窓側の席に案内された。少し遅れると伝言があった。石井は生ビールを飲みながら新宿の街を見下ろしていた。9月下旬というのに秋の気配はまったくない。今日も観測史上最多の夏日を更新したという。
 三枝は小一時間遅れて席についた。
「ごめんなさい。腎臓に食い込んでいる癌を摘出するのに手間取っちゃって。全部取っちゃえば簡単だったんだけれど……あら、興味ないわよね、こんな話。ほんと、ごめんなさい、遅れちゃって。本当は迷惑だったんじゃありません、お金にならないお相手で。」
「いえいえ、迷惑なんて思っていません。大切な客さんですから。」
「相変わらずガードが固いわね。このあいだはお友達になってくれると言ったじゃない。もう忘れたの。」
「いえ、覚えています。僕はどうも照れ症で、一度食事した程度ではなかなか打ち解けられない性質で。」
「じゃあ、今日はベッドインする。」
石井はどぎまぎし、顔がかっと火照るのが分かった。三枝は石井のそんな様子を、にやにやしながら眺めていたが、すぐに言葉を続けた。
「冗談よ、冗談。安心して。私もそこまで軽薄じゃないわ。でも、がっかりしたな。てっきり貴方のほうからお誘いがくると思っていたのに一月待っても来ないんですもの。そしたら今日二通目の手紙が舞い込んでチャンス到来って思ったの。」
三枝はしきりにワインを薦めたが、石井は生ビールを追加した。前菜がテーブルに運ばれると、三枝は例の手紙をバックから取り出しテーブルに置いた。
「絶対あの男だと思う。だって出だしの言葉、愛しの君にってあるもの。なんとも陳腐じゃない、愛しの君だなんて。」
その手紙は前回と同じ紙に印刷されていて、箇条書きにされた三つの文章よりなっている。一つ目はイタリア、ミラノでの列車事故が実際に起こったことを誇るような文章だ。その予言が的中して石井も驚いたのだが、ただし時期がすこしずれた。
 二つ目は国際航空事故の予言だが、その犠牲者の中に日本人旅行客57人が含まれると具体的な人数と日付をあげている。三つめは、近い将来、世界的な未曾有の大災害が発生するという文章だ。そして最後に「君を救いたい」とあった。
「これどう思う。地面が脈打って1メートルも持ち上げられて、落とされて、それが何度も何度も繰り返す、ですって。」
「まったく不気味な予言だ。それ程の地震に耐えうる建築物などないと思う。」
「だから怪しいのよ。そんな地震なんか起こる訳ないもの。」
「全くだ。ところで、その手紙を書いたのは、恐らく、あの男だと思う。しかし、証拠はない。消印は渋谷、彼の会社も渋
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