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予言なんてクソクラエ
第一章 目撃
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が探偵事務所、三階は叔父夫婦の住居になっている。
 叔父は所謂婿さんである。夫婦には子供がなく、石井を事務所の後継に据えるつもりなのだ。気の弱い叔父は養子という言葉を口に出せないでいるが、それを望んでいることは確かだ。そんな叔父を可愛いと思うとともに、心の底で尊敬もしていた。

 叔父は、石井の今は亡き父の末弟で、厄介叔父として石井が小学生高学年になるまで家にいた。石井の9歳年上の兄が無難な人生経路を辿るのに対し、叔父は転職を繰り返し、最後に所謂天職を見出したようだ。それが探偵だった。
 今では石井を含め職員3人、アルバイト3人を抱える事務所の経営者ではあるが、根っから探偵という職業が好きなようで今でも現役である。また笑ってしまうのだが、彼は探偵の仕事においても善をなすことを心掛けるという、まさに実直な心根の持ち主なのだ。
 石井はこの探偵事務所に勤めて1年2ヶ月になる。それ以前、警視庁に勤めていたがしくじって、酒に溺れた。見かねた兄がアル中でぼろぼろになった弟を病院に押し込め、回復すると、叔父の経営する探偵事務所に勤めさせたのである。
「だいぶ飲んだようだな。まだ顔が赤いぞ。」
事務所に入って行くと、叔父の篠崎龍二が声を掛けて来た。昨夜、石井が警視庁の刑事と飲むと連絡すると、交際費を使えとさかんに勧める。石井はこれまで刑事時代の交友関係を避けてきたが、龍二はそれが不満だったようだ。警察の力は絶大だ。それを利用したいのだ。
「ええ、朝まで飲み明かしちゃいました。二日酔いです。」
「そうか、そいつは大変だったな。でも、たまにはいい。で、どうだった。」
何がどうだったと聞いているのか意味が分からなかったが、龍二の気に入りそうな答えが頭に浮かんだ。
「何でも言ってこい、協力するって言っていました。」
これを聞いて龍二は相好を崩すと、
「よし、その関係を大事にしろよ。幾ら金掛けてもいい。交際費使い放題、許す。」
と言い放った。これを聞いていた事務員の佐々木紀子が龍二を睨みつけて言う。
「所長。いい加減にしてくださいよ。経理を預かっている者としては聞き捨て出来ませんね。うちにそんな余裕があると思っているんですか。」
龍二が苦笑いして、ソファーに座り込んでテレビに見入る磯田薫に声をかけたのは話の矛先をかわすためだ。
「おい、磯田、もう9時を過ぎているぞ。いつまでテレビにかじり付いているんだ。もし、急にお客さんが入って来たらどうする?」
 磯田と呼ばれた男は龍二の大学の後輩で48歳になるが独身である。龍二に言わせると「事務所に流れ着いて、そのまま居ついてしまった」のだそうだ。磯田は大学卒業後、放浪の人生を送っていたというが、詳しくは誰も知らない。
 龍二と磯田は、大学時代空手部に所属しており、上下関係は厳しかったはずなのだが、人を食っ
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