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予言なんてクソクラエ
第一章 目撃
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     (一)
 行徳駅南口を降り、右手の商店街の路地を抜けてしばらく行くと、一見してそれと分かる、けばけばしい装いのホテルが見えてくる。周りはビルやマンションが建ち並び、その谷間には板塀を巡らせた民家や古びた木造アパートがひっそりと佇んでいる。
 その人通りのない路地で、民家の門前に寝そべっていた猫が伸びをし、のっそりと腰を浮かせて移動を始めた。真向かいに建つホテルの入り口に背を向け、民家のじめじめとした裏庭へと歩いて行く。しのびやかな足音が近付いてきたのだ。
 男と女の二人連れである。男は38歳、女は少女ような印象を受けるが、26歳。大手生保の支店長とセールスレディで、共に伴侶がある。待ちきれぬ思いがぴったりと体を寄せ合う二人の体から滲み出ているようだ。二人はホテルの門をくぐった。
 二人が消えたホテルの前を、一人の営業マン風の男が、ぶ厚いカバンを肩から下げ、地図を片手に、住居表示をいちいち確認しながら歩いていく。しかし、よくよく見ると左手には小型カメラが握られている。男は二人の後をつけてきた探偵、石井真治である。

 大手生保の千葉南支店は総勢15名のセールスレディを抱え、支店長、支店次長が管理職として彼女達を統括している。支店長はセールスの最前線に立ち、文字通り年中無休でセールスレディ達をサポートする。体力がなければ勤まらない職業である。
 支店長がセールスレディと行動を共にするのは珍しいことではない。ここぞという時、たとえ小さな取引でも同行して頭を下げるのが一つの役割なのだ。石井の今回のターゲットはこの支店長で、依頼主はその夫人であった。

 最初は仕事帰りを尾行したのだが、彼は毎日のようにセールスレディ達を連れて飲み歩くだけで、お開きになれば、一人タクシーで帰る。となれば日中が怪しいということになり、尾行は昼夜継続に変更された。一昨日、石井が有力視していた、見た目が派手なトップセールスの女性が支店長と同行したが、何ごとも起こらず、期待は見事に裏切られた。
 今日の相手は、どちらかといえば目立たないタイプで大して期待はしていなかった。電車の中では上司と部下という接し方を崩さなかったが、駅を下りた途端、二人の態度に変化が見られ、そのままホテルへ直行となった次第である。石井は思わずほくそえんだ。
 首尾は上々だった。二人がホテルに消える瞬間、後ろから来る石井に気付いてちらりと振り向いた。二人の顔はばっちりカメラに映っている。二人がホテルから出てくるまで待たなければならないかとうんざりしていたのだが、その必要はなさそうである。

 ふと、喉がからからに渇いているのに気付いた。背広を脱いで丸めてカバンに押し込み、30メートル先のコンビニへ向かった。店内は閑散としているがセールスマンらしき若者が二人、雑誌を立ち読みしながら涼んでい
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