第八話 〜初陣〜
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し込んでいるのが見えた。
…もう朝方か。
『凱雲、いつからここに?』
『?ですからついさっき着いてそのまま』
『いつからいるの?』
『…』
やっぱり嘘か。
凱雲の事だから着いてからずっと僕に付きっきりだったのだろう。
『凱雲、僕はもう大丈夫だから凱雲も寝なよ』
『いえ、私は大丈夫で御座います』
『駄目だよ。昨日の夜からずっと父さんの仕事とかしてて寝てないでしょ?』
『…いえ、本当に私は』
『凱雲』
『…』
凱雲の名を押し込むように呼ぶ。
凱雲をこのままほっとけば無理ばかりしてしまいかねない。
だから倒れる前に休んで欲しい。
もう、僕の周りで誰かが倒れるのは見たくない。
『ね?』
『…』
すると凱雲はまた俯いてしまった。
何故こうも頑なに寝るのを嫌がるのかわからない。
すると、凱雲の目からまた涙が零れた。
え、なんで!?
『申し訳御座いません…私の到着がもっと早ければ…ッ』
あ、そういう事か。
『私に力さえあればこんな事にはならなかった…ッ!豪帯様を守るお役目を頂きながらなんと不甲斐ない!なんと不甲斐ない…ッ!』
つまり凱雲は僕が殴られて倒れた事に責任を感じているのか。
…だったら尚更その張り詰めた気を休ませてあげたい。
それにこの怪我だって元わと言えば僕がぼーっとしてた事が原因だ。
凱雲が責任に感じる事は無い。
『本当に申し訳ありませんでした!!』
『…凱雲、顔上げて』
『…合わせる顔が御座いませんッ』
『命令だよ』
『…ッ』
『…顔上げて』
『…』
凱雲が顔を上げた。
彼の顔は自分への怒りのあまり紅潮し険しくなっていて、ゴツゴツした顔の溝を伝うように涙が流れていた。
つくづくこんな凱雲を見たのは初めてだ。
でも、だからこそその涙は僕には重く感じた。
これが男が流す涙なんだと思った。
これじゃあ僕が流す涙なんてちっぽけなんだな。
そう思ったらなんだか恥ずかしくなってきた。
僕は凱雲の顔を上げさせたはいいが、その後どうするかは考えておらず、ただ笑ってみせた。
『凱雲、ありがと』
『ッ!』
その後凱雲は声を押し殺しながらも泣き続けた。
そして朝はやってきた。
『出発するぞ!準備をしろ!』
黄盛の野太い声が朝方の空に響いた。
僕らは起きていたからいいようなものを、あれでは兵士達は寝覚めが悪いだろう。
そんな事を思いながら僕は寝台に立ててあった鉄鞭を手にした。
『豪帯様、その必要はありません』
既に泣き止んだ凱雲に止められる。
結局凱雲は寝てはいないが、これから先鋒部隊が出発した後に夜間の物資運搬の役目を終えた後続部隊の兵士達に充分な睡眠
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