第八話 〜初陣〜
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い。
僕はふと安堵した。
『洋班様』
『あん?なんだ黄盛』
『もう日も落ちる頃に御座います。ここらで野営の準備をしませんか?』
『…ふん。すぐに準備をしろ』
『ははっ!』
すると黄盛は兵士達に向き直る。
『おい兵士共!!野営の準備に取りかかれ!!』
するとやっとかと言わんばかりにみな重い足を必死に動かしながら動き始める。
だが、その間誰も僕を見ない。
多分、何か手を貸せば自分達にも被害がくるのがわかっているのだろう。
みんな僕の周りを避けていく。
…こっちの方が気が楽でいいのかな。
『おい』
後ろから洋班の声がした。
僕は何も考えずにそちらの方を振り返る。
だが、その直後頭全体に激痛が走り僕は気を失った。
あぁ…なんて酷い世の中なんだ。
今偶然見てしまったが、頭から血を流してフラフラになっていた小僧の頭に向かって洋班様が最後の一撃と言わんばかりに柄入りの剣を振り払われた。
…何もそこまでしなくても。
『ふんっ』
洋班様は満足そうにその場を離れていった。
…小僧は突っ伏したまま全然動かない。
『…おい。あんま見てると目つけられるぞ』
一緒に幕を張っていた向かいの兵士に声をかけられる。
『しかし、あんまりじゃないか?…あの小僧、多分20もいってないんじゃないか』
『ならお前が代わりになるか?』
『い、いや、何もそこまで』
『ならあまり関わらん方がええ』
『…』
確かにそうだ。
ワシらにできる事なんて何もありゃしない。
それに、人に同情してやれる余裕なんてワシらには無いんじゃ。
…許せ、小僧。
だが、ふと関での出来事を思い出す。
確かあの小僧の親のおかげで他はともかくワシはうまい水にありつけた。
それがどれだけうまかった事か…。
また小僧に目をやる。
一向に動く気配が無い。
…死んだのかの。
だが。
『…なぁ、どのみちあんな場所に寝転がられては邪魔じゃないか?』
『いい加減にせい!そんなに痛い目みたいなら一人でやれ!』
向かいの兵士に響かない声の大きさで怒鳴られた。
…最後に気をつかってくれたのか。
じゃがすまんな。
恩を受けて何もしないのは後味が悪いんじゃ。
…それにワシの故郷にはあれと近い歳の息子がおるんじゃ。
『…水、もらったか?』
『あぁ、もらったさ。だがワシは戦場以外で死にとうない』
『そうか…うまかったな』
『…あぁ』
そう言うとワシは人目を気にしながら小僧の方に向かった。
『…本当に馬鹿ばかりじゃ』
ワシが怒鳴った兵士が小僧に向かったのに気付いた兵士達はぞろぞろと小僧に集まり始める。
人数はそれ程多くは無いが、みな関で
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