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コシ=ファン=トゥッテ
第一幕その九
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第一幕その九

「それこそ男に誠意を期待するなどとは」
「無駄だっていうの?」
「モンゴル人かバイキングに憐みを乞う方がまだましです」
「モンゴル人にバイキングって」
「あんな連中に」
 モンゴル人にバイキングといえば欧州の人間にとってはまさに悪の象徴である。イスラム教徒と全く同じ存在なのである。つまり恐怖でもあるのだ。
「そんな殿方達に期待しても無駄です。ですから」
「ですから?」
「同じ手口で仕返しするのですよ」
 こう言ってまた浮気を薦めるのだった。
「そしてこちらの都合と虚栄心で満たすのですよ」
「何かとても納得できないけれど」
「そんなこと。とても」
「いえいえ、おわかりになられますよ」
 デスピーナは確信しているようだった。
「必ずね」
「そうかしら」
「本当に?」
 姉妹はその言葉を信じない。しかしそれでもだった。デスピーナは確信するその笑みで姉妹を見ていた。そのうえで項垂れてそれぞれの部屋に入る彼女達を見送りそのうえで掃除に戻っていた。
 そしてここで。アルフォンソが姉妹の家に来た。まずは扉をノックする。この扉も白い。姉妹の家はその全てが白く飾られているのだ。
「静かだな。やっぱり沈んでいるな」
 家の中の気配を察して呟く。
「まあ世の中は重苦しく考えてはいけないもの。軽くならないとな」
 実はこれが彼の考えである。
「さて、御二人はいいとして」
 ここでもう一人の存在を意識した。
「デスピーナには気をつけないとな。ここは贈り物をして味方につけるとするか」
 そんなことを考えながらまずは家の中に入った。するとそこで掃除をするデスピーナと顔を合わせるのだった。彼女の顔を見てとりあえずは挨拶をする。
「やあ、今朝もお美しい」
「顔だけではなくて性格も」
 こんな調子でアルフォンソにも返すデスピーナだった。
「今日も奇麗ですよ」
「そうですな。それでです」
「何か?」
「ちょっと用があるのですが」
「御用件とは?」
「まずはこれを」
 懐から一枚の金貨を出してきて彼女に差し出してきた。
「どうぞ」
「くれるのですか」
「協力して頂けるのなら」
「そう。それだけ私の力が必要なのね」
「如何にも」
 楽しげに笑ってデスピーナに告げるのだった。
「何ならもう一枚も」
「そっちも貰うわ。それじゃあ」
「商談成立だな」
「ええ。同盟は締結されたわ」
 笑ってこうも言うのだった。
「無事ね。それで何かしら」
「お嬢様達のことだが」
「戦場に行った程度で嘆き悲しむなんてお話にならないわ」
 こう言ってここでまた肩を竦めさせるのだった。
「全く。そんなことを言ったら世界は涙で満ち溢れてるわ」
「その通りだ。それでだ」
「ええ。それで?」
「貴女に
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