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銀河英雄伝説〜その海賊は銀河を駆け抜ける
第四十三話  決戦(その二)
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何となくおかしかった、黒姫の頭領がぼやいている、こんな事滅多にない。皆もちょっと困ったような表情だ、どう反応して良いか分からないんだと思う。でも僕はこんな頭領も好きだな、なんかとっても普通の人っぽくて身近に感じる。

「しかし結構終盤は激しい戦いになりました。ヤン・ウェンリーが向かってきた時はどうなるかと思いましたが……」
クリンスマン少佐が呟くように言うとエンメルマン大佐が
「これからはもっと激しくなるさ。それにいずれはヤン・ウェンリーと戦う事になるだろう。今回はそこまで行かなかっただけだ……」
と答えた。皆が深刻な表情で頷いている。

確かに最後は凄かったし激しかった。反乱軍の第一艦隊に攻撃を集中して有利になった時は皆が喜んだ。艦橋が割れんばかりの大きな歓声に包まれたんだ。そんな時にヤン・ウェンリーがこっちに向かってきた。あの時はオペレータが悲鳴みたいな声で叫んだよ。“ヤン艦隊! こちらに来ます!”って。歓声なんか一瞬で消えてしまった。あの時思った、ヤン・ウェンリーって本当に怖いんだ、皆怖れてるんだって。

でも黒姫の頭領は落ち着いていた、メルカッツ参謀長もだ。頭領は参謀長にルッツ提督に中央突破をさせたいって言ったんだ。メルカッツ参謀長はちょっと驚いたみたいだけど直ぐ頷いてオペレータに指示を出した。その上で艦隊を少し横にずらしてはどうかって頭領に進言した。頭領は“それは良い”って直ぐに許可した。

ルッツ提督が前進して僕達が横にずれるとヤン艦隊は動きを止めた。そして反乱軍は後退し始めた、ヤン・ウェンリーもだ。その動きを見届けてから帝国軍も陣を引いた。一瞬の攻防だったけど本当に凄かった。僕なんて喉がカラカラに干上がったよ。

「取りあえず挨拶は終わった、そんなところでしょう。今回は何とか優勢を保つ事が出来ましたがこのまま終わるとも思えない、向こうも次は本気を出してくるでしょうね、何と言っても同盟軍には後が無い。今の内に休息を取っておいて下さい」
頭領の指示に皆が頷いた。



帝国暦 490年  4月 30日   ガンダルヴァ星系   ブリュンヒルト   エーリッヒ・ヴァレンシュタイン



酷い戦いだった。全体としては優勢だったけど何時までこの優勢が持つか……、そんな事を思わせる戦いだった。溜息が出そうだよ……。最初の一時間、あれが大きかったな、上手く同盟軍の出鼻を挫く事が出来た。戦闘の主導権を握る事が出来た……。

しかしなあ、俺もミュラーも追い打ちが出来ないんだ。いや出来ないわけじゃないがヤンとモートンが正面だからな、ヤンはもちろんだがモートンもしぶといから無茶が出来ない。頭が痛いよ、あそこでもう一撃できればもっと有利になったんだが……。結局は中途半端な形になってしまった。

防御戦か、もうちょっと
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