第四十三話 決戦(その二)
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ツ艦隊が中央突破を図った。そして僅かだがローエングラム公の艦隊がルッツ提督の艦隊の後方に位置するように動いた……。
慌てて前進する第十三艦隊を止めた。止めざるを得なかった……。あのままローエングラム公の居る方向に進めばキルヒアイス、ルッツ艦隊に側面を叩かれただろう。前進の勢いを無くしたところをローエングラム公に正面から叩かれたはずだ……。今思い出しても溜息が出る。狙われたのは私だった……。
ビュコック司令長官が危険だと判断して全軍に後退を命じた。幸い帝国軍は追ってはこなかった。こちらの動きに合わせて兵を引いてくれた。あしらわれたと思う……。ビュコック提督の言う通りだ、同盟軍はローエングラム公にあしらわれた……。
「閣下、少しお休みになっては如何ですか? お疲れのように見えます」
グリーンヒル大尉だった。心配そうな表情をしている。どうやら自分の思考の中に入り込んでいたらしい。彼女だけじゃない、ムライ、パトリチェフも同じような表情だ。
「そうだね、一時間程タンクベッド睡眠を取らせてもらうよ」
「紅茶を用意しておきます」
「有難う」
礼を言って席を立った。悩んでいても仕方ない。取り敢えずは心身をリフレッシュしよう。まだ戦いは始まったばかりだ。溜息を吐くのを堪えて歩き出した。
帝国暦 490年 4月 30日 ガンダルヴァ星系 ブリュンヒルト コンラート・フォン・モーデル
艦橋は静かだ。皆それぞれに飲み物を楽しんでいる。頭領はココア、エンメルマン大佐とシェーンフェルト大尉が紅茶、ヘルフリッヒ中佐が水で他はコーヒーだ。僕もコーヒーを飲んでいるけど良いのかな? 頭領は良いって言ってくれたけど……。
「思い通り行っている、そう見てよろしいのでしょうか?」
ライゼンシュタイン少佐が問いかけると皆が顔を見合わせた。
「今のところはそう考えて良いんじゃないかな。結構反乱軍に損害も与えたし悪くないと思うんだが……」
副参謀長のゾンバルト准将がそう言って頭領に視線を向けた。皆も視線を頭領に向けた。
「過程はどうであれ取りあえず時間は稼げている、そういう意味では思い通りなのでしょうね。それにお茶を飲む余裕も有る」
頭領の言葉に皆が笑い声を上げた。
「しかし兵力は同数でも艦隊数が一個多いと言うのは結構厄介ですね。こっちももう一個艦隊増やせば良かったかな」
頭領が首を傾げた。
「しかしそれでは反乱軍が誘引されない可能性が有ったでしょう。已むを得ない事だと思いますが」
「そうですよね、全く上手く行かない。何だって同盟軍は一万隻の艦隊を三個なんて中途半端な事をしたのか……。まあゲリラ戦なら兵力よりも艦隊数と考えたか……、碌でもない」
メルカッツ参謀長の答えに頭領が顔を顰めてぼやいた。
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