第一幕その六
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第一幕その六
「実にいい調子だ」
「むっ!?」
「あれは」
ここで太鼓の音が聞こえてきた。マーチ調である。
「太鼓の音だ、それではいよいよ」
「出陣だ」
「船も来ておりますぞ」
アルフォンソはここで海に見える一隻の大きな船を指差してみせる。しかしそれが軍の船でないことはわかっている。何しろ本当は戦争なぞ起こる素振りもないのだから。
「さて、それではです」
「そう、行きます」
「いざ。陛下の為に」
二人は誓ってみせて。そうしてまた言うのだった。
「軍での生活はいい。毎日場所が変わる」
「今日は遠くへ明日は近くへ」
そしてこうも言っていくのだった。
「ある時は地上、ある時は海の上」
「ラッパと笛の響き、銃と砲弾の炸裂する音」
それこそがまさに戦場ではある。
「腕は高鳴り心は燃え勝利に向かう」
「それこそが軍隊での暮らしだ」
「さて、では時間です」
アルフォンソは一応その目にハンカチを当てはしている。
「皆さん」
「はい、わかっています」
「それでは」
「ドラベッラ」
「フィオルディリージ」
四人は熱い視線を交えさせそのうえで別れる。そしてやがて船が出港し姉妹は涙を流す。もっともそれはわかる人間が見れば軍艦ではないのだが。
そしてアルフォンソはここで。優しく姉妹に対して言うのだった。
「風は穏やかです」
「はい」
「あの人はそれに乗って」
「そう。ですから気に病まれることはありません」
彼もまた演じている。
「波は静かにそして神の御加護は私達の願いを聞いて頂いておりますよ」
「そうですね。それで」
「ですから気に病むことは」
「そうです」
(しかし私も中々演技ができるな)
姉妹に応えながら別のことを考えているのだった。
(さて、御二人も中々動いてくれた)
「お姉様、それでは」
「ええ」
嘆き悲しみ続ける姉妹も見る。そしてこうも思うのだった。
(ふむ。この姉妹もすぐだな。思ったより早く陥落するぞ)
「さて、それではもう」
「ええ、帰りましょう」
(しかしあの二人も気の毒なことだ)
ふと二人に同情したりもする。
(この世に存在しないものに千ツェッキーノもかけておまけに嘆き悲しむのだからな)
「海を耕し砂漠に種を撒き風を網で捕まえようとするみたいなものだ」
とにかく女性を信じてはいないのだった。
「さて、どうなるやら」
こんなことを言いながら家に帰っていく姉妹を見送る。その頃その姉妹の邸宅で黒いメイドの服に白い靴下とエプロン、それに頭飾りをつけた若い娘があれこれと働いていた。
「やれやれ、お給料はいいけれど」
ふと掃除を中断して両手を腰にやって伸ばす。見れば髪は茶色がかった黒で長く波がかっている。目の色は黒く鼻が高い。かな
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