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駄目親父としっかり娘の珍道中
第0話 人の名前を決めるのは案外時間が掛かる
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一つだけとなっていた。これが気に入らなかった場合この赤子の名前をどうするか一から考えねばならない。

「おい、良いかコラァ! これで気に入らなかったらてめぇは強制的に【タマ】にするからな!」
「ったく、早く読んでおくれよ」
「へいへい……んじゃ行くぞぉ」

 溜息混じりで銀時が最後に書かれていた名前を読み上げる。何故その名前を最後に呼んだかはこの時の彼は全く覚えていない。恐らく適当に読み上げて行った結果そうなったと言うのだろう。

【なのは】

 銀時が口に出してそう呼んだ。その途端、赤子の泣き声がピタリと止んだ。
 その光景に二人揃って驚きの顔をする。

「銀時、もう一辺名前呼んでみな!」
「お、おう! なのは」

 再び名前を呼ぶ。するとどうだろうか!
 先ほどまであんなに愚図りまくっていた赤子が突如満面の笑みで笑い出したではないか。
 小さな両手をバタバタと震わせて体全体で喜びを表現している。何とも可愛らしい光景であった。

「どうやらこの名前が気に入ったみたいだな。うし、今日からお前はなのはだな。しかしなのはねぇ……偉く変わった名前だな」
「まぁ良いじゃないのさ。それより、しっかり育てるんだよ! もしこの子をほっぽりだした日にゃぁ、今までの分のツケ纏めて払って貰うからねぇ。腎臓なり金玉なり売っぱらって貰うからそのつもりでしっかり面倒みな!」
「わ、わぁったよ!」

 老婆の言葉に半ばビビリながら銀時はその赤子を受け取る。ズッシリと銀時の両手に赤子の重さが染み渡ってきた。見た感じは小さいのにそれなりに重い。
 単に重いと言うのではなく、命の重さがそう感じさせたのだろう。

「やれやれ、結婚もしてないのに父親かぁ。何か俺、人生かなり損してる気がするなぁ」
「普段から不摂生な生活してるからそうなるんだよ。しっかり育ててやんな。20年もしたら別嬪になるだろうしさ」
「へ? 別嬪!?」
「何だい、お前分かってなかったのかい? その子【女の子】だよ」
「ま、マジですかあああああああああああああああああ!」

 衝撃の発言に驚きだす銀時。まさか未婚の自分が赤子の、しかも女の子を育てる羽目になるとは。
 先が思いやられる話である。




 こうして、一人の駄目な男と一人の赤子の出会いはこうして始まった。
 この壮大『?』な物語はこの二人の出会いを起として動き出していく事になる。
 え? 間の話も見たいですって? その内ね。




     つづく
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