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駄目親父としっかり娘の珍道中
第0話 人の名前を決めるのは案外時間が掛かる
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銀時の手持ちはゼロ円であり、半年分の家賃を払う宛てなどない。そして、其処へ更にこの飯代まで嵩んでしまっては最悪腹を切らないといけない事になる。
 正に今のこの老婆の言葉は天の助け舟に匹敵する言葉だった。

「しゃ、しゃぁねぇなぁ。其処まで言うんだったら引き受けてやろうじゃねぇか。丁度俺も暇だったしぃ。ガキの子守なんて朝飯前だしぃ。俺主人公フラグ立ちまくりだからそれくらい軽くこなせるだろうしぃ」

 後半訳分からない事を言っていたが、要するに引き受けると言うらしく、ホッとする。そんな訳で赤子の世話をする事が決定したのだが、其処で問題が浮上した。

「そう言えば、この子名前はなんてんだい?」
「知らねぇよ。あれで良いんじゃねぇのか? 【ブチ】とか【タマ】とか」
「犬猫じゃねぇんだよ。もっと真面目に考えな!」

 このままこの男に名前を考えさせたら禄でもない名前になりそうで怖い。かと言ってそう簡単に名前など考えられる物でもない。
 人の名前とはそれこそ一生共に背負っていく代物だ。おいそれと適当に名付ける事など出来ない。
 これは新しい命が生まれる度に課せられる大きな課題とも言えた。
 ふと、老婆が悩んでいた際に赤子を包んでいた布から一枚の紙切れが零れ落ちた。それは丁度銀時のまん前に落下し、その場に止まった。

「んだぁこれ? 置手紙の類だったら破り捨ててやる!」
「住所と電話番号が書いてあったら破るんじゃないよ。そいつんとこ行ってとっちめてやるからさ」
「へいへい……とぉ」

 生返事をしながらその紙切れを広げる。其処には二人が考えていた内容は一切書いておらず、代わりに紙一面にズラッと名前が書き連なれていたのだ。

「んだぁこれ? 名前ばっかじゃねぇか」
「あら、丁度良いじゃないのさ。その中から名前を考えれば簡単じゃないかい」
「ちげぇねぇや」

 満場一致の元、銀時は広げた紙をざっと見る。この中から候補を挙げるとは言ったが、かなりの量が書かれている。正直、この中から探すだけでも結構骨である。
 が、何もない中で探すよりは確かに楽だ。そう思いながら銀時は一つ一つ読み上げていく事にした。

「そんじゃ行くぞぉ。まずはぁ……【たけし】」

 適当にその中にあった名前を言う。すると老婆の腕の中で赤子が突如愚図りだした。どうやら気に入らないようだ。

「駄目だね。次!」
「あいよ」

 駄目だった名前を消し、次の名前を言う。しかし、どの名前を呼んでもその赤子は愚図るだけ。仕舞いには大声で泣き出す始末であった。
 どれも気に入らないのだろう。ほとほと参ってしまった。

「銀時、後どれ位あるんだい?」
「もう次が最後だよ」

 銀時の目の前にはビッシリと書かれていた筈の名前が全て消されており後
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