第0話 人の名前を決めるのは案外時間が掛かる
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呼称している。
そんな訳でその宇治銀時丼を頬張りながら目の前で慣れた手つきで赤子にミルクを飲ましている老婆を見る。
老婆の腕の中で赤子はとても美味そうに哺乳瓶に入れられた白色の液体を飲んでいく。
相当腹が減っていたのだろう。みるみる内に哺乳瓶が空になっていく。
「案外様になってるじゃねぇか。あれですか? 女ってなぁ年を取るとそう言う類のことが上手くなるのかぁ?」
「放っとけ! 女はこれ位の年になると色々と他人にゃ言えない過去の一つや二つ位出来んだよ。しかし薄情な親も居たもんだねぇ。こんな可愛い赤子を捨てるなんざぁ。世も末だよ」
哀れそうに見ながら赤子を見る老婆。その光景は正しく孫と祖母の光景と言えよう。
何故、其処で母と娘と言わないかと言うと、この老婆の顔がしわくちゃだからだ。
「んで、この子どうすんだい?」
「何がだよ?」
食事を続けながら銀時は聞いた。既に丼の中身の半分以上は彼の胃袋の中に消えていっている。
この男も相当腹を空かせていたようだ。
「親が居ない以上誰かが育てなけりゃならないだろうが」
「まぁそうだろうなぁ。って、ババァ! まさかその役俺に押し付ける気か?」
嫌な予感がした。
赤子の世話など御免被る。面倒すぎるからだ。
この男の風体から分かる通り、銀時は独身だ。当然子育ての経験などある筈がない。
そんな銀時がいきなり赤子の世話などと言うハードルの高い事を出来る筈がない。
「ババァがやれよ! 俺よりも慣れてるじゃねぇか! 大体そう言うのは女の仕事だろうが! 男の出る幕じゃねぇよ」
「本来ならそうしたいんだけどねぇ。あたしもこの仕事柄子供の側に付きっ切りって訳にゃいかないんだよ。第一スナックのママが子供背負いながら仕事してたんじゃ客が逃げちまうよ」
スナックのママ目当てで来る客は大概変な妄想を抱えて来る客が多い。そんな客の前でママが子供を背負いながら仕事をしてよう物なら一気に客の熱が冷めてしまう。そうなると営業に影響してしまい下手すると経営に支障が出かねない。
それに比べて此処に居る坂田銀時は今の所大した稼ぎもなく日がな一日中ダラダラ過ごしている。時間なら腐る程あるこいつになら多少不安だが任せる事が出来るだろう。
第一、こいつなら目の届く範囲に居る。心配ならたまに覗きに来れば良い。
「冗談じゃねぇよ! そんな面倒毎御免だぜ! 他当たってくれ」
「あぁ、そうかい。折角半年分の家賃の支払いとその飯代をこの子の育児でチャラにしてやろうと思ってたんだけど、残念だねぇ。ま、あんたも忙しいって身なんだし、無理強いはしないけど……」
ふと、銀時の耳がひくついた。
【家賃と飯代がチャラ】その甘い言葉を耳にしてこの男が黙ってる筈がない。今の所
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