第二話、アリシア・テスタロッサ
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になにを望む?」
「聞いていたのかしら?」
ラウルとプレシア、両者の視線がぶつかり合った。
「着いてきなさい」
「プレシアっ、まだ彼は病み上がりっ」
踵を返して歩き始めたプレシアをリニスが諌めようとしたとき、彼女の前に小さな手が翳された。
「大丈夫だ」
そう言って、ラウルはプレシアの後についていった。
時の庭園の奥深く。主であるプレシアでさえあまり立ち入らないそこに、少女はいた。ラウルよりも少し幼い面立ちを見せる、フェイトによく似た少女。彼女は今、意識のないまま生体ポットの中を漂っていた。
その姿を始めて見るラウルとフェイトは、揃って険しい顔をした。
「…この子が私の娘、アリシア。フェイト、あなたの祖体よ」
「アリ、シア…姉さん…」
透明度の高い液体に入っている、姉であったはずの幼い少女。そんな彼女をフェイトは目を逸らさずに見つめた。
「……この子の蘇生が、私の望みよ」
告げられた望みに、ラウルはなんの返事も返さずにポットに近づいた。
ガラスに触れ合う距離まで歩いて、アリシアのフェイトと瓜二つの顔を見つめる。
「っ!?」
この場所の誰もが、彼がなにをしているか分からなかった。だが、この場の誰もが、彼が魔力を練り上げたのに感づいた。
かつて大魔導師と畏れられていたプレシアでさえも思わず構えてしまうほど高密度な魔力。ラウルがなにか変な動きをしたら力づくで止める、そんな緊張感が流れる中で、ラウルは、プレシア達が予想していたことはやらなかった。それだけでなく、なにか動くわけでもなく、変わらずアリシアの姿を見つめていた。
長い時間そうやって、不意にラウルの魔力反応が弱まり、完全に収束した。
「彼女に蘇生は必要ない」
「…どういう意味かしら?」
呟いた一言に、プレシアは低い声で答えた。すると、ラウルはアリシアから目を逸らし、プレシア達のほうへ向いた。
「アリシアの全身に魔力波を当てて体内の状況を調べた。心臓、脳含めて一応微弱な活動を捉えた。だから、蘇生は必要ないと言ったんだ」
「え?それじゃあ…生きてるっていうことなの!?」
「あっ、ああ…ぐっ、ぐわんぐわんしないでくれ……!」
襟を掴んで激しく揺すってくるプレシアにたまらずタップしながらラウルが肯定を示すと、プレシアはパッと掴んでいた襟を離して、へたりと床に座り込んでしまった。
「よかった…っ…!」
嗚咽を漏らすプレシアを見て、ラウルは一瞬、続きを言うのを躊躇った。だが、今言わなくてもすぐに気づかれてしまうこと。ラウルはふうっと息を吐いて覚悟を決めた。
「アリシアは生きている。だが、このままでは意
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