第百二十八話 促しその二
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「闇はそうしたものです」
「光とはまた違うな」
「陽と光もまた違いますし」
「光は日か」
「若しくは月か」
どちらにしてもいいものだ、月もまた。
「しかし闇は違いまする」
「地の底にあるものと言うか」
「それになりますかと」
「地の底、地獄」
「いえ、むしろまつろわぬものかと」
「土蜘蛛に鬼か」
信長はまつろわぬということからこうした妖怪達の名を挙げた。
「それか」
「そうなりますかと」
「滅んだと思うが」
「しかし身体はなくとも魂は残ります故」
「では怨霊の類か」
「そういったものではないかと」
「土蜘蛛や鬼の話はわしもよく読んだ」
書には常に出て来る、それでだ。
「あやかしの類はな」
「それこそ様々な書に出て来ますな」
「うむ、まことにな」
「それがしが思うにはそうした怨霊の類こそがです」
「闇か」
「さすればあの天海や崇伝は左道を使っているのでありましょう」
平手はこう考えた、よもや闇の中に不気味な者達が存在して蠢いているとは夢にも思っていない。
「妖僧かと」
「そうであろうな」
「妖僧の妖術に忍術は意味がありませぬ」
「そうじゃな、ではじゃ」
「久助も飛騨者も向けてはなりません」
そうしても何の意味もないからである。
「ここは退治の仕方を見つけてです」
「それからじゃな」
「動くべきかと」
こう信長に言うのだった。
「それがしはそう思います」
「では今はあの者達は放っておくか」
「確かにああした妖人共はすぐに消すに限りますが」
「妖術を使うとなるとな」
「放っておくべきかと」
「忌々しいが暫くそうしておくか」
「仕方ないかと」
平手は沈痛な顔にもなって信長に話す。
「それよいも今はです」
「朝倉じゃな」
「あの家を何とかしましょう」
「兵はまだ集めておる最中じゃ」
兵に兵糧、武器に具足等をだ。
「しかしそれはあくまで最後の最後じゃからな」
「さすればですな」
「うむ、我等からも文を送る」
義昭の様にそうするというのだ。
「朝倉義景に上洛を促そう」
「そしてですな」
「公方様への絶対の臣従を誓わせる。越前の守護を任じる」
最早斯波氏はいないも同じだ、無視してもよかったし信長が庇護している彼等にしても越前や尾張の守護の務めを既に公に辞めている。
「そうする」
「殿がですな」
つまり信長が完全に従わせるというのだ。
「そうする」
「ですか、それでは」
「うむ、手を打っていく」
「それに従えばよしとしまして」
「従わねば止むを得ない」
その兵で攻めるというのだ。
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