第三十二話 図書館その三
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「お姉ちゃんが持ってたの」
「持ってたって。愛実ちゃんいつも愛子さんのお部屋に出入りしてるじゃない」
「漫画とかライトノベルは読むけれど」
それでもだというのだ。
「純文学系は読まないから」
「それでなの」
「ううん、そういえばお姉ちゃん純文学系も読んでたわ」
「他にも一杯持ってるわよ、愛子さん」
「お姉ちゃん頭いいからね」
かく言う愛実も学校の成績はそれ程悪くない。進学のことを普通に話せる程だ。
「読書感想文に読める本も持ってるのね」
「そうなのよ」
「成程ね」
「愛実ちゃんはどの本にするの?」
「美紀ちゃんと同じのでもいいけれど」
聖花との間にいる美紀を見つつ言う。
「ちょっと違うのでもいいかしら」
「具体的にはどれにするの?」
「怪談あるかしら、小泉八雲の」
愛子の蔵書にというのだ。
「お姉ちゃん持ってるかしら」
「あったわよ、角川文庫のがね」
「じゃあそれにするわ」
愛実は怪談にした。
「面白そうだしね」
「小泉八雲は読みやすいしね」
「あの人外国の人よね」
「アメリカから来た人よ」
ギリシア系の血を引いている、元々の名前がラフカディオ=ハーンだというのはあまりにも有名なことである。
「けれど日本が大好きで」
「怪談とかも書いたのね」
「そうした人なの」
「私はそれにするわ」
愛実はここで決めた。
「怪談にするわ」
「わかったわ、それじゃあね」
「それで聖花ちゃんはどうするの?」
愛実が決めたところで聖花が問うてきた。
「私は現代語訳の雨月物語で決めたけれど」
「私ね」
「そう、どの本にするの?」
「そうね、美紀ちゃんが雨月物語で愛実ちゃんが怪談で」
まず二人が題材にすると決めた本の名前を出す。
「じゃあ私は今昔物語、いえ天守物語かしら」
「泉鏡花の?」
「それか高野聖か」
こちらも泉鏡花である。
「それにしようかしら」
「泉鏡花にするのね」
「ええ、泉鏡花の文章も作風もかなり癖があるけれど」
石川惇とはまた違った癖だ、尚鏡花は人間としてもかなり癖の強い人物であったことが様々な逸話から伺える。
「あの人にするわ」
「そうなのね」
「戯作だけれど天守物語にしようかしら」
具体的にはこの作品にしようかというのだ。
「それにね」
「何か三人共妖怪ものね」
「そういう流れになったわね」
聖花も美紀にこう返す。
「まあそれもね」
「夏だしいいかしら」
美紀はここでこう言った。
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