第四十二話 決戦(その一)
[4/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
盟軍に向かって突進していった。そして同じように相手からもエネルギー波がこちらに向かってくる。合計すれば百万を超えるかもしれない。帝国暦四百九十年四月二十九日、二十三時十五分、自由惑星同盟の、いやこの銀河の命運をかけた戦いが始まった……。
宇宙暦 799年 4月30日 ヒューベリオン ヤン・ウェンリー
「酷いものですな、ここまで練度が低いとは……」
「仕方がないでしょう。我々を除けば第一艦隊も含めて殆どが実戦不足です。ましてこの戦いは……」
ムライとパトリチェフが首を横に振っている。全く同感だ、ここまで酷いとは……。ビュコック司令長官も頭を痛めているだろう、私も溜息が出そうだ。
戦闘はまず砲撃戦で始まった。平凡な始まりのはずだったが第一艦隊の一部の指揮官が暴走した。緊張に耐えかねたのだろう。正面に居るローエングラム公、ルッツの艦隊に猛烈な攻撃を始めた。殆ど狙点も定めていないままヒステリーとしか言いようのない攻撃を始めてしまった。そしてヒステリーはあっという間に伝染した。第十四、第十五、第十六艦隊……、それぞれ前面の艦隊に猛烈な攻撃をかけ始めた。私の率いる第十三艦隊でさえそれに飲みこまれかけた……。
それに対して帝国軍は嫌になるほど冷静だった。こちらが暴走していると見ると無理をせずに後退した。そしてそれを追って飛び出した同盟軍に対して一点集中砲火で対応した。飛び出した同盟軍はその鼻面を思いっきり叩かれる事になった。第十三艦隊だけは突出を抑える事はできたが他は手酷い損害を受けて後退した……。
帝国軍は手強い、あっさりとあしらわれた……。同盟軍は慌てて後退し陣形を整えたが帝国軍は後退に付け込んで攻めてくるような事は無かった。じっとこちらを窺っているような雰囲気が有る。帝国軍はかなり余裕を持っている、そして同盟軍は今一つ不安定だ。おそらくは皆がそう感じているだろう。その事が艦橋の雰囲気を重くしている。我々だけではあるまい、どの艦隊でも同じだろう……。
帝国軍は左翼からキルヒアイス提督、ローエングラム公、ルッツ提督、ワーレン提督の順で並んでいる。同盟軍は右翼からモートン提督、私、パエッタ提督、カールセン提督、ホーウッド提督だ。モートン提督がキルヒアイス提督に正対し私とパエッタ提督がローエングラム公に向き合っている。
いや、正確に言うとモートン提督と私とパエッタ提督でローエングラム公とキルヒアイス提督に対峙している。そしてカールセン、ホーウッド提督がルッツ、ワーレン提督と正対している。
会戦が始まって約三時間、戦線は特に動いていない。良くない状況だ、こちらは勝たなくてはならないのだが出鼻を挫かれたため今一つ動きに精彩がない。何処か怯えているような動きだ。猛将カールセン提督も兵力が少ないだけに攻勢に
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ