第二章 メルセニク編
滅び行く都市よ
出会いと戦いに戦い
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混乱している頭を必死に落ち着かせながら、シキは深呼吸してもう一度リンテンスを見る。
確か、以前グレンダンに来る前は都市を巡っていたという話を聞いたことがあったことをシキは思い出した。だが、それはシキが生まれる以前の話だ。
つまり今、目の前にいるのは過去のリンテンスということになる……が、その考えをシキは即座に捨てた。疲れているだけだし、世界には同じような人間が三人以上いると聞いたことがある。
つまり目の前にいるリンテンスは同姓同名な上、実力も同じ別人ということでシキは納得した。
「――――ねえ、きいてる?」
「へっ?」
「やっぱり、ブツブツ何か言ってたから怖かったわよ?」
「あっ、ごめんなさい」
「まぁ、いいわ。ねっ、あの都庁を登ってみたくない?」
ジャニスは無邪気にそう言う。シキはこっそり目に剄を走らせ頂上付近を見る。
明らかに、というか建設途中で作業してる作業員たちの服装は都市外用のスーツだ。つまりあの都庁はエアフィルターを突き抜けている。
「止めたほうがいいよ。あれ、エアフィルター抜けてるから」
「ほう……」
ビクリとシキは目の前に座っているリンテンスの雰囲気が変わったのを感じた。
この感じはそう、サヴァリスに似ている。
……もしかしなくてもやらかしたのではないかとシキは思う。
「見えるのか?」
「い、いや、ぼんやりと見えただけ」
「誤魔化さなくていい。俺も気づかないうちに剄をこめ、一瞬で視認した……お前、強いな?」
シキはすぐにでもここから逃げ出したかった。グレンダンにいた頃のリンテンスと明らかに違う。基本的な雰囲気は同じだが、ただ一つ違う。
飢えだ、強者への、戦いへの飢え。今のリンテンスはそれを渇望していた。
しかし、ジャニスはそんなシキの心情を知ってか知らずか言葉を紡ぐ。
「いくら君たちが武芸者でも、エアフィルターの頂点より高い景色なんて、のんびり見たことないでしょう」
シキもリンテンスも口を開かなかった。
しかし、シキはそびえ立つ都庁を見ながら呟く。
「ロマン……か」
*
「……」
あの後、毒気を抜かれたのかそそくさとシキたちは朝食を食べ終え、解散した。
いつの間にか殺気もなくなっていた。
シキは部屋に戻る気もせず外縁部を歩く。
当然の事ながら何もない。当たり前だ、ここは汚染獣との最終防衛ラインや大規模な訓練をする場所だ。放浪バスの停留所や必要最低限の施設しか無い。
ふと都庁を見る。
高くそびえ立つそれは太陽を浴びてギラギラと輝いている。
『そうロマンよ。君に夢とか無いの?』
夢、なんて言葉シキは考えたこともなかった。
ただ日々を生きるのに必死だったし、グ
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