第二章 メルセニク編
滅び行く都市よ
出会いと戦いに戦い
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し、驚いた。
硬いのだ。手のひらもそうだが、特に指先が硬い。
よくジャニスの体つきを見ると細いなりに鍛えているようでシキは内心感心した。武芸者の手ではないからだ。
「ん? 手のこと? 高いところで作業するのが好きなの。君も随分鍛えてるみたいね」
「まぁ……ジャニスさんもそれなりに鍛えてるみたいだね」
一般人でここまで鍛えてる人は稀だ、特に女性は。
「色々経験したからね。ねえ、あの都市庁をどう思う?」
握手した手を話すとそう問いかけるジャニスにシキはやや冷めた目で答える。
「正気を疑うね。あれじゃ汚染獣を呼び寄せるだけだ」
「現実的ね、若いのにそれじゃ駄目よ。ロマンとか感じない? ああして空の果てを目指すっていうの」
「……ロマン?」
不意にジャニスが言った言葉にシキは反応する。
「そうロマンよ。君に夢とか無いの?」
「夢……あることにはあるけど」
だがそれをジャニスに言うのは少し気が引ける、それがシキの結論だった。
返答に困っているシキを見かねたのか、ジャニスは手を振り話題を変える。
色々話した。ジャニスは旅を続けていて、色々な都市を巡っているのだとシキも同じようなことしてると言うと嬉しそうに頭を撫でる。
不思議と嫌な気持ちはしなかった。ジャニスの人柄なのかわからないがシキは撫でられるという行為に身を委ねた。
シノーラやカウンティアのように乱暴な撫で方ではなく、母親がするような穏やかな撫で方は初めてだったからだ。
次第にシキは意識を手放そうとするが……不意に鼻に臭った匂いに飛び起きる。
そしてシキは体を硬直させる。
「え、えっ」
「あ」
ジャニスは近づいてくる男に向かって手を振る。
男は一瞬体を反転しようとするが、諦めたのかシキとジャニスが座る席に近づき、そのまま片手に持った朝食の皿を乱雑に置き座る。
「まったく逃げなくていいじゃない。って、シキ? どうしたの?」
パクパクと金魚のように口を開閉させるシキをジャニスは心配そうに見る。
席に座った男は陰気な目をシキに向けると訝しげにこういった。
「何だ? 俺の顔に何か付いてるか、ガキ」
そこにいたのはリンテンスだった。
だがシキが知っているよりも若干若い、いや若すぎる。
シッキの記憶の中ではもう少し無精髭も合ったし、頬の肉も減っていた。リンテンスに弟がいたとは聞いたこともないし、まとっている雰囲気はリンテンスそのものだった。
「こら、リンテンス、いたいけな子供を睨みつけないの。あっ、コイツは腐れ縁のリンテンス。何故か目的地が一緒になるのよね」
「お前が言うか……いつまで見ている? まるで幽霊でも見ているような顔だな」
「幽霊の方がマシかも……」
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