『東方晟成』 A
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った。『この程度』の依頼品は、何度も『直してきた』からだ。
晟成は依頼品を一ヶ所にかため、作業がしやすいようにした。そして……
ズッギュウウウウウンッ!!
晟成の右腕から『半透明の腕』がはえた。その『半透明の腕』が依頼品に触れた。すると……
「よし、『修理完了』ッ!」
『半透明の腕』が触れた途端、依頼品は『キズあと一つなく元通り』に『直っていた』。「真っ二つにへし折れた杖」はどこで折れたのか判別つかないほど、むしろ新品のように『直っていた』。
彼がこの『能力』を認識したのは7歳の時、友人が誤って滑り台から転倒し足を骨折した時だった。体験したことのない激痛に友人は泣き叫び、周りの他の友人達はどうしたらいいか分からずアタフタしている中、晟成は友人にかけより応急手当をしようとした。
友人の足に晟成が『触れた』時、それは発現した。
晟成が触れた途端、友人が泣くのを止めた。狐に摘ままれたようにきょとんとしていた。そして、友人は何事もなかったように立ち上がったのだ。
この日を境に、晟成は『自分には特別な力が宿っている』ことを理解した。
骨折の怪我も、折れた杖も、砕けた壺も、どんな破壊も元に戻す『優しい能力』を宿していることを……
修理した依頼品を片付け、晟成は作業部屋を後にした。先程貰った煮物をオカズに晩飯でもしようと考えていた時、
ピンポーン
玄関から呼び出し音が聞こえてきた。晟成は廊下の壁にかけられた時計で時間をみる。七時過ぎだった。
「『またあの野郎』か〜〜? しつけえな……」
この時間帯にこの家を訪ねてくるのは一人しかいない。キッツイ香水の匂いがする新聞会社の勧誘だ。うっとおしいなと思いながら、晟成は玄関に向かう。
ガラガラガラ‥‥
「すんません〜〜……うち、新聞はいらないって言ってんスけ……ど……」
ぼやきながら扉を開けると、晟成はフリーズした。扉の先には、いつもの新聞会社の回し者ではなく……
高そうな黒いスーツを着て、眼球がスッポリ隠れるほど大きく真っ黒なサングラスをかけた大男が三人も立っていたのだ。
「………『東方晟成』君、だね……?」
自分の声よりもかなり低いドスのきいた声で、真ん中にいる大男が晟成の名を呼んだ。
「…………(コクッ)」
晟成は突然の訪問者に、無言の相槌で応えた。ビックリすぎて声が出なかったのだ。
「……どぞ……粗茶、ですけど……」
「どうも……」
謎の集団の訪問から数分後。晟成は男達を客間に案内し、お茶を出した。男達は簡潔に礼を言うと、そのまま黙りこんだ。重たい空気が流れていた。
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