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とある覚悟は金剛不壊
『東方晟成』 A
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ゃ、じゃあ良平じいちゃんッ! 杖直しとくっスから、三日後にまた取りにきてくれなッ! 島津のおばさんもタッパー今度返しに行くからッ!」

「そうかい……それじゃあ頼むよ」

「また何か作ったらお裾分け持ってくるからね」


そう言うと二人は帰っていった。帰りの際、「うちの孫が…」「うちの息子が…」と二人が会話していたのだが、晟成は聞かなかったことにした。


「………ははは……さて、『修理』にとりかかるか…」


二人を見送ると、晟成は受け取った杖とタッパーを持って家の中に戻った。





東方晟成は、父親と母親の三人家族で暮らしていた。『暮らしていた』と過去形なのは、現在東方晟成は一人で暮らしているからである。

彼の家は代々「修理屋」を営んでおり、晟成は四代目であった。彼の父『東方貞成』は国宝級の宝物の修理に携わったこともある一流の職人であった。母『東方智子』は家庭的で温和な優しい母親で、東方家は近所でも有名な仲の良い家族であった。

そんな幸せな東方家に不幸が訪れたのは、晟成が4歳のころだ。

季節は夏。晟成の母『東方智子』が急死したのだ。原因は不明…謎の高熱を発し、体の免疫力がどんどん低下していく奇病にかかったのだ。突然の母の死に、まだ幼い晟成は何が起こったのか理解できなかった。

それから暫くして、季節は冬。今度は晟成が母親と同じ奇病にかかった。当時、仙台市は観測史上最高の大雪に襲われた。雪のせいか電波が悪く電話が繋がらないため、父親は大雪の中、晟成をかついで病院に向かった。

しかし、それが不運であった。仙台市を襲った大雪は、容赦なく父『東方貞成』に極寒の冷気をあびせ、体温を奪っていった。あまりの寒さに手足は麻痺し、さらに積雪が疲労を増大させ、歩くことすら困難であった。しかもその冷気が晟成の高熱を悪化させ、文字通り晟成は「死の淵」をさ迷った。

それでも、父『東方貞成』はそんな猛吹雪の中を、進んでいった。息子を助けるために、愛する家族を今度こそ救うために、文字通り「命をかけて」……

その後、病院につくと東方親子はすぐに治療をうけた。医師達の懸命な努力によって、晟成は一命をとりとめた。しかし、父『東方貞成』はも猛吹雪のせいで手足が腐り、そこから菌が入り込んで病死した。

晟成は4歳で天涯孤独となった。






「よ〜し、じゃあ始めるか…」


作業部屋と書かれた室内で、晟成は眼前に広がる無数の破損物に対峙していた。それらは全て、晟成が依頼された依頼品であった。中には今日頼まれた「真っ二つにへし折れた杖」もあった。
依頼品はどれもこれも酷い有り様で、とても修理できるとは思えない状態だった。

しかし、こんなものは晟成にとっては朝飯前だ
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