『東方晟成』 A
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うけど、いったい『どうやって修理している』の? 」
「……すんません、ちょっと『企業秘密』でいえないんスよ…」
主婦の疑問に晟成はバツが悪そうに答えた。『どうやって修理しているか』は、教えたくないらしい。
「まぁ、ええじゃないか島津さん。晟成君はこんなにキレイに物を直してくれるんじゃ……感謝してもしきれんよ…」
「……そうですね、おじいちゃん。ありがとうね晟成君」
「いいっスよ、それが俺の仕事っスから」
「あ、そうそう……渡し忘れるところだったわ……はいこれ」
「ン? 何スか?」
ぽんっと手を叩き、主婦は晟成にタッパーを渡した。晟成はそれを受けとると、中身を確認しようと蓋をあけた。
「おほ〜! 旨そう〜ッ!!」
タッパーの中には、美味しそうな煮物が入っていた。
「お裾分けよ。いつもお世話になっているのだもの……これぐらいしないとバチが当たるってもんだよ」
「ありがとうございますッ! いや〜、俺育ち盛りだからこういうのスッゲェ嬉しいっスッ!」
食欲をそそる何とも言えない煮物の香に、晟成は唾液で口の中を濡らした。
「………偉いねぇ晟成君は……」
「? いきなり何スか、良平じいちゃん?」
突如かけられた老人の誉め言葉に、晟成は顔を赤く染める。
「いやね……まだ二十歳にもなっていない子供が、『一人』で親の後継いで、店立派に立て直すなんて……並大抵の努力じゃできんよ……」
「……そんな大層なもんじゃねえっスよ、俺。ただ俺は、この仕事を継ぎたいと思ったからやっているだけっスよ……単純にそれだけっス……」
晟成は老人の目を見て答えた。どこまでもまっすぐな爽やかな目で……
「ハッハッハッハッ!! 言うのぉ〜ッ! いやいや、わしの孫もこんなんじゃったらのぉ〜……」
「それを言うなら私もですよ、おじいちゃん。うちの息子、晟成君と同い年なんだけど……どこでひねくれちゃったのか、この間髪の毛ギラッギラの金髪にしたんですよ〜……」
老人と主婦は身内と晟成を重ね、どうしてこうならなかったと嘆いていた。晟成は空気が若干重くなっているのを感じた。
「(…あ、あれ? 何か重い(ヘヴィ)空気…)………い、いや〜…そんなお孫さんと息子さんと比べられるようなもんじゃあねぇっスよ、俺ェ。大したことしてねえし……」
「いやいや、謙遜せんでもよろしい。わしの孫に晟成君の『優しさ』が少しでもあればのぉ〜……」
「うちの息子に晟成君の爪の垢を、そのまま飲ませたいですよ……」
はぁ……と深いため息をついて二人は黙った。
「(……や、やっべぇ〜〜……空気が重てぇ〜!)……じ
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