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ソードアートオンライン 弾かれ者たちの円舞曲
第肆話 《壊すモノ》
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『点』がある。
木の根の一部が消滅し、巨大な樹が男に向かって倒れてくる。
「この程度、無駄だ」
降下しながら言って、男は樹を右手で掴んだ。
そして、
「むぅん!」
樹そのものを、握り潰した。
描写するならば、男が空中で樹の側面を掴み、力を込めると同時に樹をまるで柔らかな林檎を潰すかのようにぐしゃりと破壊した。
男が樹を握り潰したその時、ズバッという音が男の耳に届いた。
潰された樹をバラバラに寸断し、その下から満面の笑顔で『シキ』が飛び出してきた。
「死ねっ!」
超がつく程の笑顔で言って、『シキ』は男の線を切ろうと一閃する。
男は無表情のまま『シキ』のダガーの側面を指で押さえ、顔面に蹴りを放った。
男の蹴りは『シキ』の顔面を捉えず、空振りした。
『シキ』は身体を空中で縦回転させ、お返しだとでも言わんばかりに踵を男の顔面に叩きつける。
男はうっとおしいハエを払うような動作で腕を振るい、『シキ』の踵落としを躱す。
二人は同時に着地し、そして再び『シキ』のダガーと男の拳が交錯した。
「ははっ…!」
「ふん……!」
二人の攻撃は互いの攻撃で阻まれ、シキは笑い、男は無表情のままだった。
続けて同時に放った二撃目も武器同士がぶつかり、攻撃が無に変わる。
どんどん攻撃の速度は上がり、遂には自分しか放った斬線と拳の軌跡は分からなくなっていた。
「は、はははっ……」
「…………!」
傷つきながらもまだ笑い続ける『シキ』と斬撃を浴びながらも無表情の男。
二人のその単純な殴り合いとも言える殺し合いは、二人が踊る不出来な舞踏にも似て、美しくはないものの見る者を圧倒する。
雨を弾きながら振るわれるダガーと雨に濡れながらも振るわれる拳も良い殺伐な雰囲気を醸しだしていた。
果たして、デュエルでもない、相手が死ぬ他に決着の無いこの戦いは、唐突に終わりを告げた。
「……六境開示(ろっきょうかいじ)!!」
地面を思いっきり踏みつけ、男が叫んだ。
「…………ッ!?」
本能的にバックステップで距離を取って、腰を落としていつでも飛び出せるような状況で男を見やる。
男はそれで、ふぅっと細い溜息を吐いて、足元に脱ぎ捨てたぼろのマントを被った。
「これにて(しま)いだ。小僧」
「何……?」
訝しげな目で男を凝視する『シキ』。
男は緊張させていた筋肉を戻し、相も変わらぬ無表情で『シキ』を見つめてくる。
「まだやるか? 俺はまだ出来るが、小僧。お前はもう限界だろう」
その淡々とした声は疲労を感じさせないが、『シキ』の口からは疲労の濃い吐息が漏れていた。
「ではな小僧。誠に遺憾だがお前とは少なくとももう一度、これを演じなければならないようだ――――その時まで、決着はお預けだ」
つまらなさそうに言って、男は背を向ける。
シキは男に
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