第肆話 《壊すモノ》
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チート使っただけさ」
当然だろ? とでも言いたげな態度に、男はこいつを理解した。
「お前、どこまでアクセス権限を持っている?」
「持ってるわけないだろ」
軽い、今にも欠伸でもしそうな態度に、男は表情に出さぬものの驚いた。
「ハッキングだよ。んなの思いつけよ」
はぁ、と落胆の溜息をつく『シキ』。
「ま、こんな長々話しても面白くもなんともないし………殺し合おうぜ?」
ダガーを逆手に構えて、『シキ』は心底楽しげに笑った。
男も仏頂面にも似た厳格な顔つきのまま今度は拳を構えた。
空から垂れてきた涙が、地面を濡らし始める。
二人の丁度真ん中に雫が落ちてきて、二人は同時に地面を蹴った。
○●◎
先制攻撃を取ったのは『シキ』だった。
「ラアッ!」
繰り出したのは斬撃ではなく、蹴りだった。
地を蹴ると同時に姿勢を変え、下段から顎を狙って右足で蹴り上げる。
「むん!」
男は『シキ』の土踏まずの部分を掴み、投げようと足と腕に力を込める。
「はっ!」
嘲笑う声とともにしっかりと掴んでいたはずの拘束を抜け、左足で地面を軽く蹴る。そして空中で身体を反転させ、今度は顔面を狙って蹴る。
男は手の甲で足首を叩き、蹴りを無理矢理に逸らす。
「すげえなアンタ……。格闘術じゃ、シンでも俺には勝てないのに……」
驚愕の声を発していても、彼の余裕の表情は揺るがなかった。
「お前こそ、その身のこなしには舌を巻くばかりだ」
男は無表情のまま、称賛の響きなど皆無な声で言った。
『シキ』はにいっと笑いながら大きく跳び、今度は空中で巨木の枝を斬りつける。
ずるり…、と五本もの数の枝がズレ、男の頭上から降ってくる。
枝と言えどそれは普通の木の幹ほどもある遥かに巨大な枝であり、人ひとりを簡単に押し潰せる大きさがある。
「…むん!」
だが男は一番最初に落ちてきた枝を何と右手一本で掴み取り、それを盾にすることで枝を防ぎきった。
「何てこった……。ここまでだとは思わなかった。正真正銘、化物じゃねぇか。興奮してくんじゃねか!!」
別の枝から男を見下ろして、ダガーを持っていない左手で顔を覆い、心底愉快そうに笑う。
男は『シキ』を見上げ、少し膝を曲げて、そして彼のいる場所まで一息に跳躍した。
「はっ……!」
口元の笑みを絶やさぬまま、『シキ』は男の身体を半回転させ遠心力を乗せた右腕を受け止め、地面に向かって吹き飛ばされる。
「…………」
木の根本で背中を強打した『シキ』に追撃を加えようと男は枝を蹴って、猛スピードで『シキ』へと迫る。
そして、先程と同じように右腕を振りかぶった。
「はっ、かかったなアホが!」
嘲笑し、『シキ』はダガーを後ろへと突き刺す。
彼の背後には、巨木があった。そして、今彼が突き刺した巨木の根元部分には、
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