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ソードアートオンライン 弾かれ者たちの円舞曲
第肆話 《壊すモノ》
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男の口調は淡々としていて、まるで機械のようだった。
「どうした? 貴様は無限の可能性を秘めた人の子だろう。この程度で倒れるわけがあるまい」
男は大股で倒れているシキへと近づいてくる。
シキは倒れたまま、ダガーを強く握り締めた。
そして男がシキの間合いに入った直後、
「シィッ!」
素早く身を起き上がらせ、鋭い呼気を吐き出しながらダガーを下から上へと斬り上げた。
軌道は男の線が走っている右足から左肩へと抜ける。これで――!
「遅い」
シキの決死の斬撃にもたじろぐことなくいたって冷静にダガーを持つ右手の手首を掴んで、そしていとも簡単に、握り潰した。
「――――っ、ああっ……!!!」
ぐちゃり、という音と共に、自分の右手が歪な形に変化した。どうやっても拭えない不快感を感じ、身をよじって叫んだ。
拭えない不快感は痛みを凌駕し、そして――――。

      ○●◎

「よう。随分ピンチみたいだな? シキ」
お前は、影也、か?
「ああ。にしても派手にやられたなぁ。戦えるか? このままで」
…………。
「いや、マジで無理? いけるだろ、まだ」
……正直、無理かもしれない。
「おいおい。天下のシキくんがこんなとこで敗北宣言すんのか? ここで終わらちゃ俺が困るんだよ。…………あーもう。仕方ねぇ。ちょい目ェ閉じてろ」
どうする、つもりだ?
「悪いな。だがここで諦めたお前も悪いんだ。それでチャラにしてくれ」

      ○●◎

そして、シキは笑った。
「は、はは。はははははっ!」
「…………何が可笑しい」
眉をひそめて、男は問う。
「いや、いやな? 俺はずっと、ずぅっと閉じ込められてきたんだよ。だけど、だけどさ。たった今外に出られたんだ! これを喜ばず、何を喜べというんだ!? 俺は、たった今この世に生を受けたんだ!! 永い間閉じ込められて生きていて、これが初めて外に出れた。笑わずにいられるかよ!?」
はははっ、と口角を吊り上げて、ただただ笑っている。
そして、笑みを消した。
「……シキを傷めつけた礼。シキに代わって俺が返してやるよ」
「その腕でか?」
んなわけねぇだろ、と地面に突き刺さっているダガーを蹴り上げ、左手で持った。
そして、右腕を肩の部分ごと切り落とした。
「……ほう?」
「んで、よっ……とぉ!」
落とした右腕をぐちゃっ、と踏み潰す。
次の瞬間には、腕が元通りになっていた。
「…………」
目を見開き、男は絶句していた。
このゲームには回復魔法は勿論、スキルによる部位回復すらありはしない。
だが、この少年は一瞬で腕を元に戻してみせた。
「……何をした?」
男の無表情の言葉の中に疑問を感じとったシキの姿をしたモノは、なぁにと笑う。
「ちょっとばかしシステムに介入して、
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