第肆話 《壊すモノ》
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ようやく巨大なヘビ《ブルーブラッド・サーペント》を発見した。
外見は鮮やかな緑と青の鱗で彩られたヘビだった。ズルズルと重い身体を引き摺って、それでも身体が大きな分スピードは早い。
茂みに隠れてその様子を観察しているシキと気づかず離れていく《ブルーブラッド・サーペント》の距離は、十メートルも無いだろう。シキならば余裕で不意打ちできる。
「やって、みるか……!」
ガササッ、と音を立てながら茂みから飛び出し、一直線に巨大ヘビへと走る。
サーペントが音に反応し、その爬虫類独特の彫りが入った頭をシキに向ける。
しかし時既に遅し。
次の瞬間には《ブルーブラッド・サーペント》の首は吹っ飛び、その身体は青い光を撒き散らしながら無数のポリゴン片と化した。
その中から一つの青と緑が混在する美しい鱗が残り、それを手に取って指先で触れるとウインドウに名前が表示された。
名前は《エメラルドブルーの蛇鱗》。確かにクエスト達成の為のアイテムだ。
「ふぅっ……」
僅かな虚脱感に身を任せ、その場にへたり込む。
疲労が溜まっているわけではなかったが、ただ何とも言えない達成感を噛み締めたくて座ってみた。
「……一応、言っとくけど、このクエストに限らず、クエストってのは早いもの勝ちだぜ? 俺の方が運が良かったってことで納得して……くれないか」
立ち上がって、先程自分が出てきた茂みを見やる。
しばらく凝視していると、そこからボロボロのマントを着た男が現れた。
マントの下の肢体は筋骨隆々で、顔は厳格な雰囲気を醸し出す無表情。頭髪はぼさぼさの濃い紺色で、服装はというとノースリーブの服と長めのズボン。そして肘近くまである指貫グローブと素足に脚絆を付けていた。
見たところ、武器は何も装備していない。
「…………」
男は無言でシキを見つめている。
「………?」
男はシキを見つめて、見つめて、見つめて、そして「ふん」と鼻を鳴らした。
「あの男が俺に似ていると言っていたが……こいつは俺とは違うな。まだ引き返すことができる。それに――呑まれているわけでもない」
ぶつぶつと言っていたのをいきなりぴたりと止め、男は構えもなくシキに滑るように地を蹴って飛び込んでくる。
「なっ、何するんだ。お前!?」
間一髪のところで拳をバックステップで避けた。と思った直後に、顎を掌底で打ち上げられる。
「ぐぅっ……!?」
舌を噛んだかと思ったが、反射的に舌を引っ込めていたようで自決まがいなことは回避できていた。このゲームでは舌を噛んだとしてもHPバーに変化は無いのだが。
掌底を受け、吹っ飛ばされたシキは男から2メートル程度離れたところに落下した。
「ふむ……。弱いな。俺よりも殺しに特化した能力を持つというのに、なぜ殺気を、殺意をひた隠す。よもや殺したくないから、などと言うまいな?
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