第四十一話 雷鳴近づく
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4月19日 ヒューベリオン ヤン・ウェンリー
『どうやら帝国軍が動き出したらしい、五日前から艦隊が動き出している。彼らの移動方向には補給基地が有る事も分かっている』
「こちらでもそれは押さえています」
『帝国軍の陣容から出撃した艦隊を除くと惑星ウルヴァシーに残っているのは四個艦隊のようだ。ローエングラム公、キルヒアイス上級大将、ルッツ大将、ワーレン大将。……どう思うかね?』
スクリーンのビュコック司令長官が問い掛けてきた。もっとも長官も答えは分かっているだろう。
「帝国軍が仕掛けてきたのだと思います。我々のゲリラ作戦を阻止するため誘引しようとしているのでしょう。我々を引き付ける餌はローエングラム公とウルヴァシーの補給物資です。両方失えば帝国軍は間違いなく撤退するでしょう」
私の言葉に司令長官が頷いた。
帝国軍は惑星ウルヴァシーに集結している。そして我々はガンダルヴァ星域からそれほど遠くない地点に分散している。我々にとって帝国軍の動向を探るのはそれほど難しくは無い。本来なら帝国軍は厳しい哨戒活動を行って偵察部隊を追い払い艦隊の動向を秘匿しようと努めるはずだ。にもかかわらずその形跡はない。こちらに敢えて情報を教えようとしているとしか判断できない。間違いなく帝国軍は同盟軍を誘っている。
『出撃した艦隊は補給基地を攻略するのだろうな。彼らが戻って来るまでの間が我々に残された時間という事か……』
「はい」
『時間の面ではなかなか厳しい条件だがそれを除けば決して不利とは言えない。兵力はほぼ同等、艦隊数は我々の方が多い』
司令長官の言う通りだ。決して不利とは言えない。
「鋭気と覇気に富むローエングラム公らしい遣り方です。自らの手で我々を討伐しようとしています。自信も有るのでしょう」
『一緒に残る指揮官もなかなか厄介な相手ばかりだ。キルヒアイス提督はローエングラム公の腹心。ルッツ、ワーレン提督は帝国領侵攻作戦でボロディン、ルフェーブルを戦死させた男達だ』
「彼らはリップシュタット戦役ではキルヒアイス提督の副将を務めています」
おそらくルッツ、ワーレンの二人はキルヒアイス提督が選んだのだろう。彼は今回の戦いが難戦になると見て自らローエングラム公と共に戦うと決めたのだ。そして既に一緒に戦い十二分に気心の知れている二人を残りの指揮官に選んだのだろう。もちろん能力的にも十分信頼できると見ての事だ。
改めて帝国軍の陣容の厚さに圧倒されそうな思いが有る。良くもここまで人材を集めたものだ。
『ふむ、ここまでは貴官の想定していた通りになったわけだ。ゲリラ戦を展開しローエングラム公を我々の前に引き摺り出す事が出来た……』
「はい」
その通りだ。この時を待っていた。唯一の勝機……。
『せっかくローエングラ
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