第一物語・後半-日来独立編-
第三十八章 戦場で踊る者達《1》
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」
目的を達成しても、なお、宙を行く自身の武器に戻ってくるようにと言う。
と、まるでペットのように銀の球は宙を行くなかで液体状になり、自身の使用者であるネフィアの元へ帰る。
横に垂直に上げた右の手首に集まり、待機状態である銀の腕輪となった。
ふう、と身体の熱を吐き出すように息を付く。
「残り七発ですわね……。いいえ、それにしても、幾らなんでも――」
今だかつて、経験したことのないことが起こっている。
どうしたものかと、少し不安になる。
「これはさすがのわたくしも困りましたわね」
振り返れば確かに見える。
空から銃弾の群れが、こちらを穿とうと狙いを定め向かって来る。
先程の三発を打ち落とした時にでも、残りの銃弾を加護付きで撃ったのだろう。
丁寧に消音を加え、ただのお調子者だと思えばそうではなく実力はあるようだ。
冷静に考えれば、今は関心している場合では無い。
視界に映る銃弾の群れを、どのようにして防いだらいいものか。
逃げたのでは駄目だ。追尾され、退路を絶たれればお仕舞いだからだ。
「物は試しと言いますし、試みるのもいいでしょう……」
出来るかは分からない母が教えてくれた技。と言うよりも、大きな声を出すための発声の仕方だ。
声による攻撃。
一般的に、これを獣咆哮|《ロアー》と呼ぶ。
自分は声帯やら何やらが原因で上手くいっていないらしく、獣咆哮が出来無いことは獣人族の血を引いていてる女にとっては恥らしい。
なので時々、皆に聞こえないように影ながら努力していたが成果は実らなかった。
しかし、こういう緊張感を持った場所ならばと思ったのでやる。
それに獣咆哮は広範囲攻撃の一種なので、上手く行けばいいと思う。
ので、
「すう――」
と、口から息を肺、腹へと送り込む。
ゆっくりと、銃弾を引き寄せるように。
これ以上吸えないというところまで吸い続け、そして吐く。
送り込んだ空気を、邪魔だからと外へと追い出す。
全ての空気を抜き、今度は鼻から大きく息を吸う。
予備動作であるため、きちんとすればする程成功の確率は上がるし、同時に威力も上がる。
胸が膨らむ感覚を得たら、放つ――。
「う」
お、と高い声を上げた。
声帯を震わせ、口は縦に開き空気を振動させるように。
肺に送り込んだ息を長く保つために、一気には吐かない。
周囲に獣の咆哮、遠吠えとも思える声が響き渡る。
遠吠えに似ていたが、次の瞬間爆発したように声量が上がり風が生まれた。
これに一番影響を受けたのが銃弾だ。
ネフィアを狙い、迫る銃弾が最初は微弱に左右に揺れ、次に大きく左右へと揺れた。
それにより銃弾同士がぶつかり合い、自爆を引き起こす。
いい感じですわ……!
や
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