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渦巻く滄海 紅き空 【上】
五十四 窮地
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ばかりに目を見開いた。
それは以前も体験した事のある束縛。抗えぬ力。

「確かに力を貸してやってほしいとは頼んだけど…」

不意に、九喇嘛の耳に澄んだ声が届いた。

「身体を乗っ取れ、とは言っていないよ」

忘れようにも忘れられぬ。静かで、それでいて有無を言わせぬ強き声。

《なぜ、貴様が……ッ!》
地中からピンッと張る。全身を縛るソレに抗いながら、九喇嘛は叫んだ。
突如、目の前に現れた―――うずまきナルトに向かって。

《なぜ貴様が、クシナの鎖を使える…ッ!?》




















燃えるような痛み。全身を襲う痛覚にヒルゼンは呻いた。
「ぐは…ッ」
激痛に顔を歪める。自らの身体を見下ろした彼は目を見開いた。

其処には、口から小刀を伸ばす蛇の姿があった。
(一体何処から………そうか!)

初代・二代目火影との戦闘中に大蛇丸が仕掛けた【万蛇羅ノ陣】。
金剛如意棒で大部分は蹴散らしたものの、無数というのは伊達では無い。

「あの時の生き残り、というわけか…」
突然現れた蛇を目にして、ヒルゼンが口惜しげに零す。

【万蛇羅ノ陣】にてヒルゼンを襲った数多の蛇。その蛇の生き残りが主人の窮地を救ったのだ。
口に隠し持っていた小刀を用いて。


「形勢逆転ですねぇ…。先生?」
くつり、と微笑する。大蛇丸の目前で立ち往生する相棒の危機に、閻魔が躍り出た。

〈猿飛ッ!!〉
「おっと」
閻魔の鋭い爪を優雅にかわす。そのまま大蛇丸は、ピンッと伸ばした指先を閻魔に向けた。

【潜影蛇手】を繰り出す。袖口に忍ばせた蛇が大蛇丸に従い、閻魔の身体に絡みついた。

〈くそ…ッ〉
「邪魔よ。其処でおとなしくしてなさい」
蛇に身体を絞めつけられ、地に伏せる閻魔。それを見下ろした大蛇丸が高慢に嗤った。
ゆっくりとヒルゼンに近づく。

身動き出来ぬ憐れな師を、目に焼きつけながら。
「これで終わりよ…」

ほんの一瞬、大蛇丸は何かを思い返すように瞳を閉じた。暫し感慨に浸った彼は、やがて口を開く。
弟子から師匠へ。

「さようなら。我が師であり、偉大な三代目火影…――――猿飛ヒルゼン」




最後の挨拶を交わした、かつての師弟。
止めを刺そうと近寄ったその瞬間、俯いていたヒルゼンが顔を上げた。逃さんとばかりに大蛇丸の肩を強く掴む。

「…そうだのう。これで最後にしよう…――――大蛇丸」
師から弟子へ。
敗北を認めぬ強き瞳を見た大蛇丸は、無防備に近づいた己を悔やんだ。


(か、身体が…言う事をきかない…!?)

突如としてぴくりとも動かぬ自身の身体を大蛇丸は愕然と見下ろした。ヒルゼンに視線を戻す。

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