第参話 《第一層ボス攻略戦》〜後編〜
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ず吐き捨てて、だが自分の仕事を全うすることにした。
「おいお前ら! 行動遅延になってる奴らを連れて下がれ!!」
「いや、だが……」
「いいから早く! 死にたくないなら早くしろ!」
行動遅延を免れたH隊の四人はシキの切迫した響きの声に弾かれるように周囲のプレイヤーを抱え、アティとチルノがコボルドクイーンを引きつけている間に彼らは入り口へと逃げていく。
「これで何とかなるか。後は……」
シキは横目で二人を見やる。
チルノが攻撃をさばき、アティがその光る剣で斬りつける。
アティが斬りつける度に、コボルドクイーンのHPバーは異常な早さで減っていく。
「…………」
アティのその鬼神の如き戦い様はシキの胸中に恐怖と羨望を抱かせた。
そして、身を震わせて一言。
「…………嗚呼、解体してみたい……」
そこまで言って、気がついた。
「俺は今、何て言った……?」
いつの間にか歪んでいた口元。
それを自覚して、自分に嫌気がさした。
「くそ……! 訳が分からん!」
そんな風に悪態をつき、シキもセンチネルを片付けながらコボルドクイーンへと向かっていく。
○●◎
「おや……。正にジョーカーということか」
くっくっと劇役者風の男は笑う。
「何が可笑しい。お前の創造したボスが今正に死のうとしているだろう」
無表情をほんの少し歪ませ、白衣の男は問う。
「私はこの舞台劇を脚本通りに進める気は毛頭ない。全てを君の意思に任せる気は無いのだよ。今は君に従うが、私は元来根無し草の自由人。誰かの管理下に置かれるなどまっぴらごめんだ」
薄笑いを崩さず、ただただ言う。
「それに、私は役者のことではなく舞台を最優先して考えている。面白いか否か。エンターテイナーとして、私はそれを追求するのみだ」
劇役者風の男と白衣の男の思考は大きく異なる。
劇役者風の男は舞台を盛り上げるのみを考え行動している。白衣の男は――。
「さて……。これから君はどうするかね?」
「見物するだけではつまらない。私も脚本に踊らされてやるとしよう」
「――ハ。それでこそ、それでこそ君だ。私と同じく、自らの起源と快楽を根本とし活動する。そうでなければ、人間ではない――――!」
「違うな。私と君とは違いが多すぎる。欠陥が多すぎて人間から外れた君と、いつの間にか人間から外れていた私。この違いは明白だろう」
白衣の男の無遠慮な台詞に劇役者風の男は違いないと笑った。
「それでは、君に、君の信じる神のご加護があらん事を」
そんな台詞を残し、劇役者風の男は煙のように影も残さず消え去った。
白衣の男は小さく溜息を吐いて、
「……全く、私の周りにはどうしてこうも訳の解らない者ばかりなのだ」
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