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銀河英雄伝説〜その海賊は銀河を駆け抜ける
第四十話  相性
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だがそれは俺だけだろうか……。

「卿は酷い男だな」
「……」
「私に戦うなとは……」
ローエングラム公が呟くように声を出した。戦争の天才が戦う事を許されない、確かにこれ以上の苦しみ、哀しみはないかもしれない。頭領がまた一つ息を吐いた。

「御胸中、お察し致します。しかし、この道を選んだのは公御自身のはず。後悔しておいでですか?」
「……いや、それはない。私は十歳でこの道を選んだ。後悔はしていない」
後悔はしていない、そう言い聞かせている、俺にはそうとしか思えない……。

「……人はそれぞれ歩む道によって得る物も有れば失う物も有ります。全てを得ようというのは欲張りと言うものです」
黒姫の頭領も俺と同じ事を考えたのかもしれない。頭領の言葉にローエングラム公が苦笑した。
「卿は遠慮が無いな」
「……」

大広間は沈黙している。苦笑を浮かべているのはローエングラム公だけだ。軍人としてなら戦うのが正しいのだろう、しかし統治者なら危険は避けるべきだ。特に今回は負ければ失うものが大きすぎる。だが軍人として有能であればある程、理性では理解できても感性では納得するのは難しいかもしれない。まして今回の戦いはこの銀河で最後に行われる戦いになるはずだ。その戦いに参加できない、不本意だろう。

「キルヒアイス提督もバルバロッサを降りてください。ミュラー提督と乗艦を換えて頂きます」
「私も……、分かりました」
キルヒアイス提督が答えるのと、ミュラーが頷くのが一緒だった。なるほど、ウルヴァシーに残るのはいずれも守勢の上手い人間達だ。

「ローエングラム公とキルヒアイス提督にはリオヴェルデの補給基地を目指してもらいます。そこを制圧した後はウルヴァシーに反転せずそのままバーラト星系へ、そして惑星ハイネセンを突いて頂く」
大広間がどよめいた。ここでハイネセンを突く?

「自由惑星同盟政府がローエングラム公の姿を確認すれば、彼らは自分達の防衛計画がその根本から覆された事を認識するでしょう。その上で彼らを降伏させ、そして彼らから惑星ウルヴァシーで戦う同盟軍に対して降伏するように勧告させる」
彼方此方で興奮する姿が有った。俺も興奮している、なるほど、公をウルヴァシーから遠ざけたのはこれも有っての事か!

「これは競争です、各艦隊が戻ってきて同盟軍を降伏させるのが先か、それともローエングラム公がハイネセンを降伏させるのが先か、……惑星ウルヴァシーの防衛軍が単独で同盟軍を降伏させる前にどちらが先に功を挙げるか、楽しくなりますね」
頭領の冗談に興奮が更に大きくなった。いや、もしかすると本気か? ルッツとワーレンが顔を見合わせて力強く頷いている。面白い! まさに宇宙最後の決戦に相応しい戦いだろう!

「面白い! 良いだろう、卿の作戦案を採ろう」
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