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久遠の神話
第四十六話 また一人その一

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          第四十六話  また一人
 上城はこの日中田の家にいた。闘いの為でなく彼に夕食を誘われたからだ。それで今は彼の家のリビングで二人で同じソファーに座ってゲームをしていた。
 格闘ゲームで対戦をしながらだ。上城は中田に問うた。
「あの」
「あの?何だい?」
「いえ、僕達はその」
「まあ剣士だけれどな」
 それでもだとだ。中田は自分のキャラを動かしながら上城に応える。
「それでもな」
「普段はこうしてですか」
「ああ、ゲームしたり一緒に飯食ったりしてもいいだろ」
「闘いとは別ですか」
「俺嫌いじゃない相手には誰にでもこうなんだよ」
「剣士同士でもですか」
「昔からな。学校の成績で競り合っていても好きなアイドルのことで言い争っている相手でもな」
 周りから見ればどうでもいいが本人達は至って真剣になることでもだというのだ。
「こうして家に呼んだりしてな」
「ゲームをしてですか」
「飲み食いしたりな」
 誘ったその夕食の話もする。
「そうしてるんだよ」
「そうなんですか」
「楽しくやればいいんだよ」
 生活、人生を楽しむ中田らしい言葉だった。
「だから君ともこうしてな」
「普段はですか」
「闘う以外の時間はな」
 こうして共に遊ぶこともするというのだ。
「それとこれとは別だろ?」
「ですかね」
「俺はそう思うけれどな」
 やはりキャラを動かしながら言う中田だった。そして。
 そのキャラと動かしながらこうも言う彼だった。
「それでだけれどな」
「今度は一体」
「丁度この対戦が終わったらな」
「その時はですね」
「そろそろ肉が焼けるからさ」
 中田は言いながら自分の後ろのキッチンを見た。見ればそこのオープンに光がある。ぼんやりとした感じの橙色の光だ。
 その光を見て中田は言うのだった。
「マトンな」
「羊ですね」
「羊の匂い平気だよな」 
「はい」
 上城もキッチンの方を振り向いている。二人共今はゲームの動きをストップさせてそちらに顔をやって話している。
「好きです」
「ああ、好きか」
「マトンって確かに匂いがありますけれど」
「ラムと違ってな」
 マトンは成人の羊の肉。ラムは子羊の肉である。同じ羊の肉だが呼び名が違っているのだ。
「匂いがあってな」
「癖がありますよね」
「俺にしたらその匂いがいいんだよ」
 中田は笑って言う。
「食欲がそそられてな」
「だからですか」
「ああ、それでだよ」
 こう言うのだった。
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