第三十一話 怪談話その六
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「あとはこの場所も、この赤煉瓦も」
目の前のその赤煉瓦の建物も指し示される。
「よく映画等で撮影されるんですよ」
「戦争映画で、ですか」
「はい、東映の映画でも」
この歴史ある映画会社の名前も出される。
「出ますよ」
「あっ、東映ですか」
「じゃあ仮面ライダーとか戦隊に」
「仮面ライダーは陸自さんに協力してもらってましたね」
自衛官はこのシリーズについては苦笑いになった、それはどうしてもというのだ。
「映画で」
「海自さんじゃなくてですか」
「陸自さんだったんですか」
「寂しいですね、陸自さんにとってはいいことだったですけれど」
自衛官は自分が所属する立場から話す。
「うちじゃなかったんですよね」
「仮面ライダーに出られなかったんですか」
「そうだったんですね」
「出たいですね、個人的には」
日本人なら誰もが思うことだ、特に仮面ライダー自身になることはその役者にとって生涯の栄光と言っていい。
「切実に思いますよ」
「じゃあここでライダーと敵の種族が戦ってもですね」
「それもいいんですね」
「私個人としましては」
願望を語るのだった。
「怪談以外にも」
「特撮のお話もですか」
「欲しいんですね」
「映画もいいですけれどね」
ここでは普通の映画、戦争映画のことだ。
「特撮もあれば」
「何時か来てくれるといいですね」
「心から願っています」
こう話すのだった、そうして。
そんな話をしながらだ、今はかつて兵学校だった海上自衛隊幹部候補生学校を見回る彼等だった。今はそうしていたのだ。
その中でだ、景子は海辺のその短艇置き場の松の木、並んでいるその木々を見て四人にこんなことを言った。
「ねえ、この松の木ってね」
「松がどうかしたの?」
「何かあったの?」
「いや、またこの話だけれど」
どうかというのだ、その木達を見ながらだ。
「綺麗だけれど」
「それでも?」
「何か出そうよね」
やはり木を見ながら言う。
「ここもね」
「グラウンドにその噂があるからね」
琴乃は松を見た後で今自分達の左手にあるその白いグラウンドを再び見てそれから景子に対して応えた。
「ここもね」
「この砲台も動くっていうし」
景子は砲台も見た、今は動く気配はないが。
「それだと松もね」
「柳だったらもっと怖いわよね」
琴乃はこの木も話に出した。
「そうよね」
「柳は夜見たら怖いよな」
美優もこう言う、松ではなく柳だったらどうかと考えながら。
「幽霊が出そうっていうかな」
「松でも迫力あるわよ」
景子は今も松を見てそのうえで話す。
「夜にここで見たらね」
「確かに迫力ありそうだな」
「その間に何か見えたら」
白いものなり燃えている感じのものなり
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