第三十一話 怪談話その二
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「そんなこと聞きました」
「あっ、里香ちゃん一度ここに来たことがあったのよね」
「うん、前にね」
里香は琴乃に顔を向けて答えた。
「中学生の頃に」
「その時も聞いたの」
「ずっとここに住んでおられるお爺さんとお会いしてね」
江田島に住んでいる老人からの話だというのだ。
「聞いたのよ」
「そうだったのね」
「海で訓練していたら白いつなぎの作業服の人がいたとかね」
「白?」
「そう、白だったの」
里香は白と聞いてきょとんとした顔になった琴乃に話した。
「白のつなぎの作業服だったの」
「あれっ、海上自衛隊の作業服って確か」
琴乃は今丁度通りがかった自衛官を見て言った。日曜だが当直でここに残っているらしい。
「青よね」
「つなぎもね」
その作業服もだというのだ。
「あと幹部の人は紫だから」
「紫なの」
「そう、どちらも白じゃないわよね」
「それでどうして白なの?」
「海軍が白だったの」
里香は暗い顔になって琴乃に話した、まさにそうした話をしている時の顔だ。
「海軍のつなgじの作業服がね」
「それってまさか」
「そうなの、多分ね」
「幽霊だったのね」
琴乃は白い日差しの中で蒼白になった、空も青いがそれとは別の青さになっていた。
「海軍の人の」
「そうしたお話もあるのよ」
「そうなのね、それにしても」
「怖い話よね」
「ここってそんなお話も多いのね」
「歴史があってしかも軍事関係で学校でもあるから」
怪談話の十分条件が三つ揃う場所だ、それならというのだ。
「そうした話が多いのよ」
「ううん、そうした場所でもあるのね」
「みたいね。ただ怪談話っていったら」
「怪談?」
「うちの学校も多いから」
「八条高校もなの」
「そう、多いのよ」
こう言ったのである。
「実はね」
「そういえば結構聞くわね」
琴乃は里香の話を聞いて頷いた。
「幾つか」
「七不思議どころじゃないでしょ」
「ええと、確か」
琴乃は指を折って数えだした、思いつく限りの学園の怪談話を。
「お池の河童に校門の口裂け女に」
「プールの妖怪もあったわね」
「垢舐めね」
「ガジュマルの木のキジムナーに」
それにだった。
「理科室の動くマネキン、トイレの花子さんに茶道部のぬらりひょん。これで八つね」
「ざっと出しても八つよね」
「七つより多いわね」
琴乃は視線を上にして指折って数えつつ話した。
「絶対にね」
「もっとあるわよ」
「あと何があったかしら」
琴乃はまだ数える、学園内の怪談話を。
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